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特集 スペシャル対談 ― 身体表現・俳優コース 特別企画 ―

対談9

柄本 明  ×  天願 大介 学長
 (俳優・演出家)        (映画監督・脚本家)

日本映画大学では、2016年4月から「身体表現・俳優コース」を新たに立ち上げた。
特別企画として俳優・演出家の柄本明氏と天願大介学長との対談を実施し、将来、映画・映像関連業界の俳優をめざす高校生に向けたメッセージや映画の魅力についても語っていただいた。
天願 身体表現・俳優コースは、1・2年はスタッフ養成のカリキュラムをこなして、3年から俳優について専門的に学ぶ形になります。
 
柄本 なるほど。その方が潰しが利くしいいですね(笑)。
 
天願 これは柄本さんにお聞きしたいのですが、俳優というのは“役者バカ”ではないですが、俳優しかない、俳優一本で行きますっていう人の方がいいのでしょうか。

対談2

対談1

柄本 たしかにそういうことを言う人はいますけど、そもそもどういうことをするのか分かってもいないし、言うなれば“青春の誤解”ですよね。
僕なんかは就職して2年目ぐらいに見た芝居が偶然面白くて、そういう場所がカッコよく見えた。やはり“青春の誤解”です。
それで仕事を辞めてこの世界へ入ってきたんだけど、ただ運がよかった(笑)。やってみて嫌いではなかったし、そこで難しさとも出会った。
俳優って注目される職業だから来る人も多いと思いますけど、経済的なこともそうだし、なかなか上手く行かないですよね。
天願 たしかにそんなに簡単じゃないですよね。今は俳優だけで食えてる人は少ないという現状があります。
 
柄本 俳優というものにはいろいろ考え方があって、演劇と映像の仕事に出るというのはやっぱり全然別なことです。
演劇は我々のリスクだけでできるから、みんなバイトをしたお金で小屋を借りてやっています。
でも映像の仕事というのはお呼びが無ければ、本当に「お呼びでない」訳です。
 
天願 映画や映像の世界だけで売れる俳優を育てるっていうなら、最初からどこかのプロダクションと組んでやる方法もあると思います。
でも、演劇とか俳優には人前で何かをするという快楽があって、それと同時に恥ずかしいと思ったり自分をクールに見ている知性の両面があって、その2つのせめぎ合いで演劇は発達してきたと思います。
特に戦後の演劇というのはそうだったと思うんです。
柄本さんもその2つの間で揺れている人だと見えるし、この大学で俳優を目指すなら、そうやって快楽と知性の間で揺れる人になってほしいです。

対談4

柄本 演劇というのは要するに、“多勢に無勢”になって人に見られる訳です。
そこで人に見られることで、恥ずかしいと思う自分や上手くいかない自分、そうやっていろいろな自分が現れてきます。
それで何か人にもらったセリフを言うと、そこでもまた何かと出会える。
そのことはあなたしか思わない訳で、それがあなたの演技です。
そうやって様々な自分と出会うことができて、自分の潜在意識にタッチしてしまうと面白くなっちゃうんだよね。
そうしたら経済的な問題とかじゃなく、もう辞められなくなってしまう。
天願 このコースは俳優だけじゃなく、スタッフに関することも学べるというのが特徴の一つです。
なのでトレーニングをして俳優を目指すだけじゃなくスタッフのことが分かりながら表現することに思いを巡らす――そんな俳優が出てくれればと思います。
まぁ、面倒くさい俳優ですけど。

対談3

柄本 何を考えてこのコースに来るかは分からないし、理由なんて別に構わないですけど、要するに自分探しですよね。
でも、その“自分”というのはこれからもっともっと分からなくなる。
けど、分からなくなればなるほど楽しくなります。
初めて『うなぎ』で今村昌平監督の前に立った時、テストの時はホイホイできていたのに、「よーい、スタート」の声を聞いた時に体が動かなくなった。
裸にされるっていうか、“みんな見られちゃう”っていうイメージ。
あれは強烈でした。
1秒足らずの時間だったと思うけど、どうしようどうしようって思って、結論はもう一生懸命やろうと(笑)。
それでそういうようなことに巡り会うと、役者っていうのは辞められなくなります。
そういう瞬間がこの場所にあるっていう風に知ったら、辞められなくなるでしょう。
 
天願 テレビに出て売れたいとか、そういう理由から最初は来ると思うんですけど、スタッフの勉強もさせる形にしたので、そこで考えたり悩んだりした上で決断をしてほしい。
芸能学校や俳優学校とは違う形のアプローチがあるのかなと思っています。
柄本さんのように演じる上での快楽と知性の間で揺れる人になってほしいです。

対談5

柄本 自分の経験から言うと、苦しまないとダメだと思います。
自分で考える、想像外の苦しみと出会うことになるけど、俺はそこを宝の山だよって言います。
このセリフは言いにくいとか、そこは宝の山なんです。
だからハードルを低くして「はい、飛べた」「これ飛べます」っていうことではなく、ずっと飛べない人でいないといけない。
飛べる人はダメです。こういう仕事をしていてずっと思うのは、“何もできない自分”というのをただ感じるだけです。
“できる”なんてことには到底辿り着かない。もう“何もできない自分”というのをただ確認している毎日です(笑)。
      PROFILE      
柄本 明

1948年東京都生まれ。1976年劇団東京乾電池を結成。座長を務める。
1988年『カンゾー先生』にて第22回日本アカデミー賞最優秀男優賞を受賞。
以降、さまざまな映画賞を受賞。映画のみならず、舞台やテレビドラマにも多数出演し、2011年には紫綬褒章を受章した。
2015年には第41回放送文化基金賞 番組部門 『演技賞』受賞。

対談7

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