伊参スタジオ映画祭「プレ映画祭」で映像ジャーナルコース2年生制作の5作品、
伊参スタジオ映画祭で、卒業制作「エイン」、シナリオ大賞映画化作品「星屑夜曲」(15期卒業生作)上映!

11/19、群馬県吾妻郡中之条町ツインプラザで伊参スタジオ映画祭2006プレ映画祭~中之条町で生まれた映画たち~が開催された。この中で日本映画学校映像ジャーナルコース2年生が、今年6月に合宿して取材した中之条町の職人たちのドキュメンタリー5本と、メイキングが上映され、指導にあたった日本映画学校・安岡卓治講師と、映像ジャーナルゼミ2年生が会場を訪れお世話になった町の皆様にご挨拶しました。


左上から、唐沢さん、堀口さん、担任・安岡講師、辻井講師、左下から山下、豊里、藤重、鈴木

~職人たちとその人生~
 
『石が変わるとき』(DV/11分) 制作:鈴木宏子、山口倫生、秋本千佳
『ふたり』(DV/12分) 制作:須藤 瑞、内田 圭、鶴 若菜
『満足の庭』(DV/11分) 制作:豊里 洋、西信好真
『山に生きる』(DV/11分) 制作:小田洋嗣、佐々木直貴、藤重仁海
『金言(きんげん)』(DV/12分) 制作:吉原健介、畑中千尋、山下泰治
メイキング映像 (DV/68分) 制作:辻井 潔 

指導:安岡卓治、浜口文幸、辻井潔、島田隆一
協力:群馬県中之条町、伊参スタジオ映画祭実行委員会、ほか

『中之条と私』 映像科2年映像ジャーナルコース 鈴木 宏子

 私が初めて中之条に行ったのは、今年の6月でした。
 日本映画学校の2年になり映像ジャーナルコースを選択すると、6月下旬から7月にかけて合宿実習というものがあります。合宿実習というのは講師数名と学生たちが田舎に行き、その土地の人々を取材し企画から撮影までを合宿中に行うという画期的な実習です。
今年の取材地に選ばれたのが群馬県の中之条でした。
 中之条には、伝統工芸や職人の技というべきものを持った匠の方などが数多くいらっしゃいました。その方々の中から取材対象者となる方を選び、その方を主人公とした映像作品を作るべく撮影をするわけです。
私たちの班で主人公と決めたのは石工(いしく)の斉木さんという、中之条の有名な霊山にある石仏約100体を2年かけて修復したという経験をお持ちの方でした。
実習期間中はほとんど毎日が撮影になりました。ご自宅に行き仕事風景を撮り、斉木さんやご家族の方にインタビューし、石仏修復に関わった町の方々にインタビューし、そして山に登り石仏を撮り・・・、班員の中には疲れからか風邪をひく人も出る始末で、取材から帰ってきても睡眠時間を削ってその日撮れた素材確認や次の日の準備にあてたりと、今思い返してもとてもハードな日々だったと思います。
そんな中でも、斉木さんのお母さんから佃煮をもらったり、お茶を飲みながらお話をしたことは良い思い出です。佃煮は次の日のお昼と一緒に食べました。
そのようにして合宿が終わり、撮影したテープは学校に持ち帰り編集し、なんとか作品が完成したのでした。
映画学校での発表もつかのま、担任の安岡先生から実習作品が中之条で毎年行われている伊参スタジオ映画祭のプレ上映で11月に発表されることを聞き、参加させていただくことになりました。
会場には多くの方が町内や全国各地から集まってきており、その中には合宿実習でお世話になった方々もいらっしゃいました。
自分たちの作った作品がこういった場で発表され多くの方の目に触れる機会というのはそうあることではないのでとても良い経験ができたと思います。
 斉木さんをはじめご協力いただいた中之条の方々と、お世話になった伊参スタジオ映画祭スタッフの皆様に感謝です。ありがとうございました。


11/23より第6回伊参スタジオ映画祭 http://www8.wind.ne.jp/isama-cinema/ が中之条町伊参スタジオで開催された。日本映画学校18期卒業制作「エイン」(監督/モンティンダン・映像科2006年卒)、昨年の伊参スタジオ映画祭シナリオ大賞受賞作「星屑夜曲 ほしくずやきょく」(監督・脚本/外山文治・映像科2003年卒)、Jam Films S「すべり台」(監督/アベユーイチ・映像科1989年卒)など日本映画学校に関係する作品も上映された。


左から、佐鳥利行伊参スタジオ映画祭実行委員長、外山文治監督、
モンティンダン監督、篠原哲雄監督(『月とキャベツ』など

伊参スタジオ映画祭のこと

岡安賢一<日本映画学校15期映像ジャーナルコース卒~日本映画学校卒業後、地元中之条町に戻り伊参スタジオ映画祭のスタッフをしている~>

紅葉も終わりかけた葉もまばらな木々、キンと冷え込む空気、足元にはシャクシャクと音を立てる霜柱・・・ここは群馬県の山の中。普段は人の声もまばらなこの土地に、毎年県内外から大勢の人が足を運ぶ小さな映画祭がある。
群馬県中之条町。ここは1996年、群馬県人口200万人到達記念として撮影された小栗康平監督作『眠る男』の撮影拠点となった町。伊参(いさま)と呼ばれる地域にある当時廃校となっていた木造校舎をスタッフ宿舎として改築し、寝泊りはもちろんのこと、フィルムの編集などもその校舎内で行った。そのことをきっかけに以後この校舎は「伊参スタジオ」と呼ばれることとなった。
そして同い年、篠原哲雄監督がこの伊参スタジオを拠点とし『月とキャベツ』という映画を撮影。山崎まさよしさん主演のこの映画は上映後、彼のファンなどから熱い支持を受け、以後『眠る男』の映画セットや資料などとともに『月とキャベツ』の衣装や資料がスタジオに展示されることとなり、映画上映から10年たった今も日本各地からこれら映画のファンが伊参スタジオを訪れている。

2001年、地元ボランティアや町役場などが中心となって、この山の中の伊参スタジオに隣接する体育館を上映会場として、「伊参スタジオ映画祭」が行われる運びとなった。監督や俳優などをゲストに迎え、『眠る男』や『月とキャベツ』の上映はもちろんのこと、2006年の今年までにも地元を中心に撮影された『独立少年合唱団』(緒方明監督作)、『雨の町』(田中誠監督作)などが上映されている。

今年は『月とキャベツ』制作10周年。映画祭ではその記念として撮影現場の秘蔵写真の展示や篠原哲雄監督、松岡周作プロデューサーらを招いてのトークショーを行った。その特集の中では日本映画学校卒・アベユーイチ監督のJam Films S『すべり台』の上映もあり、映画に映る若き山崎まさよしさんに、300人を越す観客は黄色い声援を上げた。

また、伊参スタジオ映画祭では例年、若手監督作品の上映も手がけている。昨年、日本映画学校からは『月から落ちてきたうさぎ』(宇賀神光祐監督作)を、そして今年は『エイン』を上映し、監督のモンティンダンさんにも来場していただいた。『エイン』は日本で暮らすミャンマー人の家族の葛藤を描いた映画であり、同級生や家族に対して心の壁を作っていた主人公の少年に対する見ず知らずの田舎に暮らす人々の優しい態度は、遠方から映画祭に訪れたお客さんに対する地元中之条町のおっちゃんおばちゃんの優しい態度に共通する、という声を若いお客さんから聞いた。

ところで、伊参映画祭独自の企画で映画祭の目玉となっているのが「シナリオ大賞」である。これは映像化を目的とした映画の短編・中編シナリオを全国から公募し、映画祭スタッフや篠原監督らが審査、大賞を受賞した短編・中編2作品を、映画祭実行委員会や中之条町などが全面的にバックアップして映像化させるというもので、作品完成時には賞金の授与も行われる。この企画の狙いは、若手映画監督たちの映画作りを後押しすると共に、撮影場所の提供やエキストラ参加などで町に映画を根付かせようというもので、今年の映画祭で6つの作品が完成するまでになった。
昨年、このシナリオ大賞・中編の部で日本映画学校卒の外山文治さんが大賞を受賞した。映画の名は『星屑夜曲』。そしてこの作品内の幾つかのシーンは、今年の夏、中之条町で撮影された。『眠る男』同様スタジオの校舎で寝泊りしながら俳優・スタッフ間の連帯感を上げ、撮影の際も厳しさの中に笑顔を見ることができる現場だった。また、この映画には地元中之条町の町民が多数参加し、上映会場にはその方たちや家族の姿もあった。単なる“町おこし映画”の粋を軽々と超えた“泣かせる映画”『星屑夜曲』は、伊参での初上映を皮切りに今後、他の映画祭などでも上映される予定だ。

と、やたら長くなってしまった伊参スタジオ映画祭の紹介ではあるが、日本映画学校卒で現在映画祭スタッフをしている僕の目から見て、今年は特に「映画は誰のものか?」を考える年となった。上映から10年たった今も東北から関西までお客さんが上映に足を運ぶ『月とキャベツ』はお客さん一人一人の中に深い根を降ろしている稀な映画であることを確信したし、外山さんの映画も伊参で選ばれ、伊参で映画化され、ついにはお客さんの前、体育館のスクリーンに大写しになった瞬間、監督の手を離れしっかりとお客さんのもとに届けられたと感じた。やはり映画は人に観られてこそ、人の心に根付いてこそなのだ。そんなことは当たり前のことなのだが、山の中の小さな映画祭ゆえ、通常の上映環境よりさらに「製作者から観客への伝わり」が強く感じられるのかもしれない。
これから伊参にすこし長めの冬が来る。けれど春になればまた今年のシナリオ大賞受賞作の撮影が始まる。そうとうな重ね着をしないと寒さにまいる小さな映画祭ではあるが、ぜひ一度足を運んでいただきたい温かい映画祭、それが伊参スタジオ映画祭なのだ。