日本映画大学は、地域と連携し、現在、麻生区役所地域みまもり支援センター、イオンシネマ新百合ヶ丘と共催で、『こども映画大学』を毎年8月に開催しています。こどもの映画教育について、アクティブ・ラーニングを活用した「こども映画教育Ⅱ」(教養科目)を受講する大学生と地元の小学生が映画づくりを通して、共に考え、学び合い、協同作業を通じてのチームワークや相互コミュニケーションを図ることで、こどもの自主性や成長を培っていく、行政と教育と企業が一体となった地域連携教育プログラムです。麻生区在学・在住の小学生4年生~6年生が、毎年大学生と協働して映画づくりを行っています。完成した作品は、イオンシネマ新百合ヶ丘の大スクリーンにご家族を招待し、上映します。こどもたちに、映画づくりを通しての学び場を提供しています。
本学3年及び4年生の科目履修者が、麻生区役所・イオンシネマと共催のイベント=『こども映画大学』に参加している小学生に映画づくり(シナリオ作りから撮影、編集など)を指導しながら共に作品を作り発表する。映画教育が提案する3つの力。映画を読む(情報解読)・映画を作る(表現)・映画でつながる(情報共有・発信)。出来上がった映画に込められた視点は誰がどのように考え、どのように表現されてゆくのか。小学生と制作過程から完成・発表までを共にすることにより、映画としての表現方法、発想の過程、その面白さ、チームワーク、課題を体験し、学び合う。
「あいうえお」という文字を習う。それぞれはひとつずつの文字であるが、「あ」と「お」を組み合わせると「あお」という言葉になる。同じ「あ」に「い」を組み合わせると「あい」という言葉になる。同じ「あ」でも組み合わせにより違う意味になる。
「笑っている人」の映像がある。お笑い芸人の映像を組み合わせると「お笑い芸人を見て笑っている人」という意味になる。同じ「笑っている人」の映像に誰かが失敗している映像を組み合わせると「失敗を笑っている人」という意味になる。
文字や言葉と同じように、映像も組み合わせによって違う意味になる。同じ笑った顔でも人格さえ違うように見せることができる。なぜその組み合わせにしたのか、その組み合わせにどのような意味が隠されているか。また、組み合わせをするためにどのような映像を撮影すればよいのか。実際にシナリオを書き、それを表現するための映像を撮影し、組み合わせる。自分が思った通りに他人に伝わるだろうか。
映像を「見る」「作る」「見せる」この3つを繰り返すことでたくさんの組み合わせを知り、そこに隠された映像の意味を読み解き、作り出す能力が鍛えられてゆくのである。
日本映画大学 准教授 熊澤誓人
東宝株式会社入社後、出向先の東宝映画にて市川崑監督、犬童一心監督など数々の作品の助監督を務める。2011年『天国からのエール』で劇場映画監督デビュー。他監督作品に日本ラオス合作映画『ラオス 竜の奇跡』(2017)テレビドラマ『ここはグリーンウッド』(2008)がある。川崎市麻生区と共催のこども映画制作ワークショップを担当しており、区内の小学生にも指導している。
映画プロデューサー。原一男監督『ゆきゆきて、神軍』(1988)の助監督を経て、森達也監督『A』(1998)、『A2』(2000)をプロデュース、山形国際ドキュメンタリー映画祭特別賞・市民賞を受賞。プロデュース作品『LittleBird イラク戦火の家族たち』(2005)がロカルノ国際映画祭人権部門最優秀賞受賞。共同監督作品『311』(2011)、編集作品『遺言 原発さえなければ』(2013)が山形国際ドキュメンタリー映画祭で公式上映。2016年、韓国・DMG国際ドキュメンタリー映画祭短編部門審査員。同映画祭Asian Docs Co-Production Network日本代表を務める。著書に『ドキュメンタリー映像制作の作法』(玄光社刊)がある。
脚本家。日本映画学校(現・日本映画大学)卒業後フリーランスとして、脚本だけでなく編集などにも幅広く活躍する。2010年より指導助手としてジュニア映画ワークショップに参加、2015年〜2018年には指導講師を務めた。