2005.05.09

Category:講師

「新入生の君たちへ ~好奇心の鬼となり、何事にも積極的に関わる」武重邦夫(プロデューサー)

 

君たちは映画の道を選んだ。 
アーチストになるべく、 厳しい困難な人生を選んだのである。
立派な選択だと思う。 どこか若者らしい「覚悟」 が感じられて清々しい。
そして僕は、 君たちと出会い、 君たちの希望の実現を手助けをする。
1年生のゼミを主宰するオッサンとしては、楽しくもあり、 身の引き締まる思いでもある。

 

言うまでもなく、 映画作りは人間の在り方を描く仕事である。
たとえ小鳥や動物しか現れない映画でも、 それらを見つめる人間の目が存在する。
つまり、 映画作りの根幹に在るのは人間学なのである。 
人間学は心理学でも社会学でもないし、文化人類学でもない。
そうしたもの全てを包含した哲学みたいなものだ。
「哲学か・・・」 哲学と聞くと日本人は皆な難解な哲学用語に拒絶反応を起こす。
でも安心してほしい。 僕のいう哲学はもっと平易で明快な 「人間はなんと助平なものか・・」 と書かれた映画学校の理念のことである。
あの理念書は今村昌平監督が書いたものだが、 たった6行に人間の所業が丸ごと詰まっており、 
さらに、その所業を見つめる己への問が書かれている。
そして、 さらに今村さんは云う・・・映画を目指す者は人間観察の実行者であれと。
映画学校の理念は映画作りの指南書である。 この学校には入ってきた者は、 まず、 そこから取り掛かって欲しいと思う。

 

諸君はたしかに学生ではあるが、 ゼミでは映画の新人スタッフと受け止めたい。
高校生や大学生という甘ったれた特権を一日も早く脱ぎ捨て、 映画制作を目指す若いスタッフとしての自覚を持って貰いたと思う。 
スタッフとは、 共に力を合わせ一つの作品を作り上げる創作活動の仲間のことだ。 
お互いがそれぞれの分野を責任を持って担っている。 小さな誇りと志と互いの信頼が無くては
成立しない間柄だ。 
若いけどガキではない、 どこか風格をもった連中がノソノソしているゼミ・・・。
ゼミを主宰するオッサンとしては、 そんな若い衆に出会いたいと願っている。

 

諸君は、 わずか三年後には自らの翼で巣立って行く。
そのためには、 映画の世界で自由に活動できる強靭な翼が必要だ。
すべてに積極的に関わり、 想像を創造に持ち上げる筋力を鍛えて欲しい。

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