2005.06.27

Category:講師

「劇団1980『ええじゃないか』韓国公演」五十嵐満(日本映画学校教務課)

 

2005年・日韓友情年の6月、俳優科卒業生が中心の劇団1980「ええじゃないか」韓国公演が3都市で行われました。「ええじゃないか」は、今村昌平監督原作で、幕末の両国見世物小屋街を舞台に、江戸から明治への大変換期を生きる庶民たちの凄まじいまでのエネルギーを活き活きと描いた作品です。今村作品では、泉谷しげる、桃井かおり主演で映画化されましたが、舞台では、藤田傳演出で横浜放送映画専門学院二期生、六期生の卒業公演として上映され、これも大好評を博しています。

 

劇団1980は、これまでルーマニア・イタリア・ブラジルと数々の公演はすっかりお馴染みですが、今回は劇中演奏に韓国でも有名なグループを起用するなど大胆な改変を加え、更に新しい内容にトライし、初めての韓国公演に向け意欲的に取り組んできました。

 

さて、ソウルでの公演は江南区にある「白岩ホール」で3日間上演され、連日若者を中心に満席の状態で大成功のうちに幕を閉じました。幕末日本での勤皇や佐幕、列強からの開国への圧力、お伊勢参りや農民一揆などと複雑な世界がベースになっており、日本人でもその時代背景をよく知らないと、なかなか理解しにくい芝居であることから、韓国ではかなり無理があるのではと心配していましたが、観客の反響を見ると、適確なハングル字幕の効果もあったとはいえ、芝居の内容に敏感に反応するなど、日本文化への理解度や関心の深さを改めて感じることができました。

 

ソウルにやって来たもう1つの大きな目的。それは、卒業生たちとの再会。日本映画学校では、過去多くのアジア諸国の留学生が巣立っていきました。中国、台湾、香港、マレーシア、インドネシア、バングラデシュ他です。中でも韓国からの留学生が最も多く、印象も強いものがありました。現在、日本では、韓流ブームで、映画、TVドラマなど数多くの作品が紹介され、その活況ぶりは素晴らしいものがあります。そんな中、卒業生たちは、映画・TV・CMの各分野で活躍しており、仕事の話や失敗談、韓国での生活など色々な四方山話ができるのを楽しみにしていました。

 

初めての仁川空港。恐る恐る出口を覗くと、しっかり出迎え。そこからは、すっかりとお客様扱いで、折角ドロ縄式で覚えてきたアンニョンハセヨの挨拶が無駄になりました。第一日目は観劇の後、当然のように同窓会が始まり、いつしか連絡網で集まった総勢8名が卒業年度を超え、日本での学生生活の思い出やアルバイトでの苦労話に花が咲きながらの大宴会となりました。誰も彼もが久しぶりの顔でしたが、皆つい昨日の様に実習作品や先生の話で盛り上がり、豚カルビの煙の向こうに3軒目まではなんとか覚えていますが、当然のように第一夜は沈没・・・。

 

宿酔いで目覚めた2日目。今日も卒業生たちと市内見物をした後、観劇に。日曜日の夕方なので客入りが少し心配でしたが、会場は若い人人で一杯。主催者でもないのに思わずニンマリしている自分がいました。今晩は、ソウルでの最終日なので終演後演出家の藤田傳さんや役者、スタッフを囲んでの懇親会。店には今村監督の大ファンだという若手映画監督イム・サンスさん、韓国側のコーディネーターである卒業生の俳優キム・ウンスさんをはじめ韓国の映画・演劇界から、多勢お客様も見えていました。当然ながら「ええじゃないか」の劇評にはじまり、日本と韓国の映画・演劇、両国の文化の違いや男と女の話など多岐にわたる話題でまたもや大盛り上がりで、店内は、日本語・韓国語・英語が飛び交いながらの完全無国籍状態と化していました。勿論のこと焼酎・マッコリ、ビールの杯はどんどん進み、ソウルの夜は熱く更けていきました。そして2軒目からの記憶もだんだん薄れていき、今夜も計ったように沈没・・・。
帰りの朝、飛行機で三日酔いの自分を恥じながらも、今回の韓国公演に感謝。卒業生たちに心から感謝。 カムサハムニダ ―  アンニョンヒケセヨ!

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