2005.12.05

Category:OB

「『長距離ランナーの孤独』に負けないぐらい孤独」外山文治(シナリオライター)

 

映画「ティファニーで朝食を」のA・ヘップバーンは、何故猫を飼っていたのか?
「話し相手が欲しかったんだと思う。孤独になるとダメになる、そんなところが人間にはあるようだ」とは、10年程前に放送された某ドラマの中での解釈である。
私はこの解釈がとても気に入っている。

 

本校に入学した際、講師は私に「人間の本質を見よ!孤独になれ。孤独を恐れるな!」と、声高らかに助言した。随分酷い事を言う先生だと、私は孤独よりも彼を恐れ慄いた。
卒業した今、その言葉が少しだけ理解できる気がする。私達は成長の歩みを止めてはならない。時には1人で己を見つめ、身の程を知り、非力さに絶句し、それでも勝負しなければならない。だから、孤独を嫌うな。そんな意味も含んだ助言だったのだろう。経験はまだないが、孤独が作品に力を与える事もあるのかもしれない。私が助言を完全に理解できる日は、さて、何年後になるのだろうか……。
学生時代、忘れられない事が一つ。
当時、私が書くシナリオは評判が悪かった。センチメンタル過ぎて、少女漫画みたいで、人間が書けてない。それが毎度の評価だった。別の作風は、何故か書けなかった。お前の書く物語は恥ずかしいからと、クラスメートに読んですら貰えない事も、もちろんあった。

 

そんな私に、私が今も師匠と(1人で勝手に)崇拝する講師が掛けてくれた言葉がある。
「お前はそのままで行け。小難しい物語は、他の奴が書けばよろしい。プリティウーマンって映画見たか?階級の違う二人が恋をする夢のような作品。美貌を持った女が、どうして娼婦になったのか。彼女は何を思い夜の街に立つのか。そこを描くのが日本が考える優れたシナリオの特色。たぶん今のお前には書けない。だけど、全世界の映画産業においての日本映画の占めるシェアは10%もないよ。視野を広げて、頑張って書いてみろ」

 

私は今もその言葉を糧に、脚本をコンクールに送る日々を(何故か日本で)過ごしている。

 

先月「伊参スタジオ映画祭シナリオ大賞2005」
http://www8.wind.ne.jp/isama-cinema/5th/scenario2005.htm にて、大賞とスタッフ賞の二つを頂きました。
審査員の方々の評価は「トゲのある作風ばかり選んできた私達だが、今回は恋愛映画の王道のような作品を大賞にした。幾分、少女漫画的ではあるが」との事。

 

未来の事は判らない。だが、私は私の物語を書いてきて良かったと、今は思う。
さて「伊参スタジオ映画祭シナリオ大賞」では、大賞受賞後に作者自らが作品を映像化、翌年の同祭にての上映が義務付けられている。……弱った。シナリオばかり書いていたので、現時点で私には映像化するメンバーやノウハウがない。当HPをご覧の卒業生、在校生の方々、是非力を貸して下さい。話だけでも聞いていただける方、ご連絡を切実にお待ちしています。 あて先は hoshikuzu925@yahoo.co.jp まで。
お願いいたします。

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