2006.01.23

Category:OB

「目的のない人生」佐野亨(ライター)

 

卒業制作の慌しさにかまけてまったく就職活動をしないまま日本映画学校を卒業した僕は、たまたまスタッフを募集していた近所の映画館に勤めることになったのだけれど、半年後、経営上のトラブルからその映画館が潰れてしまい、食いっぱぐれていたところで映画の本を扱っている出版社の求人を偶然発見し(僕は積極的に職を探すということをしたことがないのだ)、そこで編集者として働き始めた。しかし、いろいろあって7ヶ月後にその出版社をも辞めることになってしまい、またどこかに勤めようかなと考えていたところ、知り合いを通じて原稿書きやデータ集めの仕事が入るようになり、流されるままフリーランスの道に足を踏み入れたのだった。

 

僕は日本映画学校の2年次から映像ジャーナルコースに在籍していたので、ドキュメンタリー映画製作における企画書作成、アポイントメント、取材、テープ起こしなどの一連の作業は、ライターとして活動する上で大いに役立っているし、何より異なる価値観を持った人たちと切磋琢磨しながらものを作り上げていくという経験は、それまで穏当な環境で育ってきた世間知らずな僕にとって実に刺激的な社会勉強であった。もちろん在学中はそれが後に役立つかどうかなんて考えていなかったけれど。

 

五木寛之は、人生に目的はない、と言っているが、僕はこれまでに何か目的を持って生きていたことはない。でも、それでいいんである。僕の同級生も含めて、日本映画学校の卒業生・在校生の中には、他の誰とも代替不可能な才能を持っている人がたくさんいると思う。そうでない僕にできることは、とにかくその時々で自分が面白いと感じたものにふらりふらりと吸い寄せられ、首を突っ込んでいくことだけなのだから。

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