2006.03.27

Category:OB

「まだやってるよ、こんなこと」港岳彦(脚本家)

 

この3月18日に、映画『ちゃんこ』(サトウトシキ監督)は無事に初日を迎えることができた。
筆者はこの映画に共同脚本という形で参加させていただいた。企画にかかわってから2年。デビュー作。しかし結果的に、筆者の貢献度は非常に低い。なぜか。力が足りなかった。未熟だった。やはりこれはメインライターである山田耕大さんのホンだと思う。だから作品に対して距離を置いたり、もっとひねくれた態度でいたいのだが、ヒットして欲しいし、思い入れもあるので、そうもいかない。

 

新宿トーア。舞台挨拶を控えた初日2回目の上映。客席は満席。立ち見まで出た。上映中、筆者は館内の隅っこに腹を押さえて座り込んでいた。極度の緊張状態。胃がひどく痛んで吐き気がした。しかし客席に何度か起きたささやかな笑い声を耳にして、少しだけ気持ちが楽になる。おおぜいの他人たちと、一本の映画を楽しむあの感覚。ああ、俺はいま映画を見ている、と思った。

 

上映終了後、映画のモデルとなった広島大学相撲部を創設した柴川敏之さんや、女性部員の清水さんらにご挨拶することができた。ひときわ感慨深かった。そう、この映画はまず何よりも、広島大学相撲部のものだ。彼らの存在なくして成立しない映画なのだから。ニコニコ笑う柴川さんと握手をした。温かい手だった。この一瞬は今後長く心に残るだろうと思った。

 

映画学校の同期生も、何人か初日に駆けつけてくれた。彼らとは在学当時から仲が良かったわけではない。顔見知りではあったけれど、特に親しい交わりを持った記憶はない。卒業して、フラフラして、お互い、カネや仕事や女性で辛酸を舐めて、あるとき再びめぐりあい、なぜか妙に馴染んでしまった友人たち。それぞれ、奥さん同伴で見に来てくれた。
打ち上げでは、当然、同期生による吊るし上げがはじまる。糾弾される。難詰される。反論を試みる。言い訳にしかならない。そこをまた突っ込まれる。つまり、映画学校の撮影実習の打ち上げとさして変わらない光景。いやはや。まだやってるよ、こんなこと。これからも、できたらいいな。

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