2006.04.17

Category:OB

「じゃりばん」菊池亘(キャメラマン)

 

「じゃりばん」「ジャリバン」・・・子供向けの番組をよくこう言う。広辞苑によると「じゃり」とは「劇場などで見物の子供」のことを言うらしい。ということは「砂利番」という字で「子供番組」という意味であろう。

最初に「じゃりばん」に参加したのは6年前の冬。以前、映画で組んだ監督からの紹介であった。
「できますかね・・“じゃりばん”なんて。」「同じアクションだから一緒だよ。プロデューサーも合わなかったら途中で降りていいからって言ってるし。」「そうですか・・」

 

かくして、2001年「百獣戦隊 ガオレンジャー」で私は“じゃりばん”デビューを飾るのである。
初めて体験するめくるめくアクションの世界。連日連夜の火薬の嵐。スタントだけでなくキャメラマンもワイヤーで吊られる華やかさ。巨大ロボット戦の特撮も特撮班ではなく本隊が撮る。つまり、全部撮る。
カット数だってオシャレだ。フィルム撮影の機動性を活かし、自己最高記録は一日186カットだった。
ロケ出発は現場到着時に露光可能時間帯になる逆算の早朝。夜は送りにならない逆算のぎりぎりまで。
そのロケだって現在過去未来は当然、宇宙、異次元、異空間どこでもござれだ。
しかし、こんな過酷な日々でも、当のベテラン「戦隊」スタッフは楽しそうなのである。諸監督らはアイデアが枯れるどころか、森羅万象、すべてがネタになっていく。

 

ある日、ロケで凄まじい人数の見物の子供たちの表情に気づいた。みんな真剣、夢中、大感動なのである。
そう、この表情は「戦隊」スタッフの表情と同じであった。そして、たぶん、かくなる私も同じ表情であるのであろうと思った。
「戦隊」とか「仮面ライダー」のスタッフは自らの仕事を「子供番組」と呼称する。なんとなく差別用語っぽい響きがある「じゃりばん」の言葉に対して誇りと自信を持ってそう表現しているのであろう。
しかし、彼ら(私含め)の表情は本当に“劇場の子供”なのである。貴方達が「じゃりばん」なのである。
こうして、過労による腎臓出血でドクターストップの勲章などを経験しながら「戦隊」での三年間は過ぎていった。
その後、「仮面ライダー」を経験しつつ仕事の傾向がなぜか特撮ものに集中しはじめ、特撮の王道“ゴジラ”の東宝のヒーローものや、喜劇の王道“寅さん”の松竹のヒーローものなど六年近く携わっている。

 

決して、特撮アクションキャメラマンを看板にしているわけではない。たまには、青春ものや人間ドラマを撮ってみたい。
しかし、息子の友人の母親に「菊池さん、今も地球を守ってますか?」と聞かれると元気よく「はい!」と返事をするわたしであった。

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