2006.08.14

Category:OB

「卒業5年後にて」高橋智美(アルバイト)

 

経験しないと分からない事がある。乗り越えてみないと分からないことがある。

6月29日、私は日本映画学校に久しぶりに行った。

卒業してからは2度目になる、前回はガイダンスで、監督した卒業制作を上映するということで訪ねた。今回は講師の渡辺さんの受け持つ脚本ゼミで話をするためだ。

 

はじめ、お電話をいただいたとき、私でいいのかな?という思いが最初にあった。私はいま映画とは程遠い生活をしている。渡辺さんはそれも卒業後の一例として面白い。と言ってくださったので、私はそのお話を受けることにした。

話すことが無いわけではない。実はいっぱいあるのだ。

学校へ到着すると、いろいろな感覚が蘇ってきた。前回来たときはあまり感じなかったが、5年も経つとまた強烈だ。

映画、音楽、文学、土臭くて怠惰な生活を送っていた事が思い出された。校内を歩いている人がなんだかとても若々しく感じられる。

卒業してすぐの頃、アルバイトで履歴書を出すたびに、日本映画学校が最終学歴でいいのか?と自分を呪ったこともあったが、今となってはこの学校を卒業して本当によかったと思う。なぜなら私は大きく成長した、と自分で実感できるからだ。それも卒業制作のおかげだと思う。

 

脚本ゼミも今卒業制作の準備に取り掛かっていた。渡辺さんが進行役で卒製についての話を進めていくが、だんだんと私は違和感を覚えた。なんだかとてもクールなのだ。今までの経験から、痛いところを突いてくる奴や、敵意丸出しでわざと難しい質問をぶつけてくる奴などを予想して覚悟を決めてきたのに、皆さんおとなしい。こういうことは普通に働いていてもよくあり、こちらが熱く問いかけてもさらっと流されてしまう、世代の違いなのだろうか?

 

しかし、さすがは映画学校だ。酒が入るとガラリと雰囲気が変わった。というか変わりすぎた。どうやらこのゼミにはさまざまな問題が埋まっていたらしい。渡辺さんと生徒との大口論に発展し、もはや私の話どころではない。卒製で監督をした私には生徒の言い分もよく分かる。そしてそれをやり遂げた今の自分には渡辺さんの伝えたいこともよく分かる。

私が卒制を通して得たものは、度胸、体力そして客観的に観察する目だ。でも今それを彼らに伝えてもすべて理解するのは難しい。自分がそうだったように。

今後、渡辺さん含め講師の皆さんがどんどん年をとって、さらに新しい世代がどんどん入ってきて、共通言語がもてない時代が来るのかもしれない。でもその真ん中に映画作りがあって、そのエネルギーでみんなが繋がっていくんじゃないかなぁと、ふと思った。

なかなか刺激的で勉強になる1日だった。

 

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