2006.09.18

Category:OB

「映画祭より在校生の皆さんへ」三國朋子(フリーランス)

 

愛する日本映画学校を卒業して、はや7年。テレビのAD、カナダへの留学、インド人の政治家秘書、アメリカの証券会社、映画の現場、映画祭スタッフ、なんの統一性もない職場を渡り歩いてきた根無し草です。こんにちは。
自分の将来を思いやるあまりに試行錯誤を繰り返した結果、こんな悩ましい職歴になってしまいました。
だけど今日も元気に生きています。

 

現在は昨年に引き続き、東京国際映画祭(TIFF)の作品部に所属しています。
今の時期は映画祭にかける作品選定を行っており、映画祭の仕事の中でも最も楽しい期間を過ごしています。
試写をまわる中で、私がお世話になった監督の作品や同期が作った作品を見つけるとやっぱり嬉しいですね。
みんなでバトンを渡すように作品を作り上げている感覚があります。しんどい仕事をする中で、この連帯感には何度も助けられています。

 

ここでぜひ皆さんにお知らせしたいのが、この度のTIFFで行われる今村昌平監督の追悼特集です。
スタッフが手を尽くして集めた作品、その数26本。35mmも16mmもかき集めました。
この企画にはもちろん日本映画学校からも多大なご協力をいただいており、一般には未公開の今村監督の短編も上映いたします。
今後滅多にない機会です。
監督とお仕事された方々もゲストに招聘する予定ですので、現場でのリアルな話しを聞くチャンスです。
おもしろいですよ、今村組の話しは。

 

私自身も学校で何度か監督にお会いしたことがあります。
監督の控え室に図々しく乗り込み、運よく二人きりになった私はこともあろうに、私が監督している実習がうまくいかないんですよぉ、みんな言うこと聞いてくれなくって…などというグチを言ったことがあります。巨匠今村昌平に、尻の青い学生が自分の実習のグチです。お門違いも甚だしい。若さとバカさは紙一重。今考えても赤面いたします。身がすくみます。
監督は、プカリと紫煙をくゆらせて『そらぁ君が悪いんだろ』とおっしゃって、あぁやっぱり原因は私ですか、とうつむく私を見てクックックッと笑っていらっしゃいました。
せっかくのチャンスに自分の間抜けぶりを披露した自分に激しく憤る現在、今回の東京国際映画祭では少しでも成長した私を見てください!という勝手な意気込みでがんばっています。

 

みなさんもぜひ東京国際映画祭で今村監督の作品をはじめ多く映画を見てください。ベテランの味わい深い作品から力強い新人の作品まで、一般の劇場では滅多にかからない作品も世界中からTIFFに集まります。
吟味に吟味を重ね選考されたその作品達に出会ってください。そしてその作品に対して自分なりの意見を持つこと。これがどんどん自分の肥やしになっていきます。
表現というアウトプットを目指すのであれば、まずはインプットから始めて自分の中に持つ世界をぐいぐいと押し広げ続けてください。
いろんな経験は積んだもの勝ちです。根無し草になったとしても、風を受け止める葉を茂らせていなければここぞという時に飛ぶことはできません。強くしなやかな幹を持たなければ、異なる世界を受け止めることができません。
自分の中にたっぷりとした世界を持ち、表現の幅を広げていってください。

 

東京国際映画祭の観客から、いつか出品者になるであろう皆さんのご来場をお待ちしています。

 

第19回 東京国際映画祭 概要
開催期間:2006年10月21日(土)― 10月29日(日)
開催会場:六本木ヒルズ、Bunkamuraをメイン会場に都内の各劇場及び施設
公式HP:http://www.tiff-jp.net
※ 今村監督の特別追悼上映会の詳細は後日HPにて告知されます。

ページトップへ