2006.10.16

Category:OB

「予期せぬチャンス」小林由尚(俳優)

 

俳優科で殺陣の指導をして頂いた佐藤正行先生に、「殺陣を続けた方がいい」と言われ、先生が指導する武人会に通って約1年弱。そんな或る日、武人会の中の何人かが新宿梁山泊公演「エビ大王」に出演できるという話を聞いた。場所は、なんと韓国。そして、東京、大阪。「出番はあまりなくて、殺陣のシーンのみの出演だ」と言われたが、新宿梁山泊の役者さん達と共演できて、しかも、異国の地・韓国で演じられる。「これに出演できたら、自分にとって財産となるような経験ができる!」と思った。
もちろん、武人会の人のほとんどが出演したがっており、心の中では、「実力が劣っている自分は外されるだろうなぁ」と思いながらも、ぜひ、出演したいです」と先生には伝えておいた。

 

ある日、佐藤先生から「小林は、今後、予定ないよな?」と言われ、何だろうと思いつつも「ハイ」と答えた。
実は「エビ大王」の武人会代表メンバーに選ばれていたのだ。
稽古場に行くまで、いろいろ不安はあったが、稽古場には見習いとして新宿梁山泊に入った映画学校同期の染野君がいる。
同期がいるというのは、安心感があっていい。
初顔合わせ。稽古場に響く高い声がモチベーションを上げる。声の主は、座長の金守珍氏だ。これからすごいことをやるんだ。そう思っていると、続いて本読み。実は、自分には殺陣だけでなく、何と役があって台詞もあった。金さんの現場では、簡単なオーディションをやる。色々な役を演じさせられ、自分に当てはまりそうな役を決められるのだ。自分は、最後に演じた「オカマ」の役になった。
役が決まってからは、連日の稽古。それと大道具、小道具、衣装類の準備。これらは全て手作りだ。昼は職人のようになって道具と衣装作り。夜は芝居の稽古。日を追う毎に、1日じゅう新宿梁山泊にいる日が増えていく。公演が迫る韓国に入っても、これは同じで、ある意味すごいことだと思った。
いよいよ本番当日を迎える。初の韓国での舞台、気になるお客さんの反応はとても温かいものだった。笑いどころでは全員が笑い、パフォーマンス中では手拍子を打ち、集中する場面では集中して見てくれる。日本とはまた違ったお客さんの反応が面白かった。
千秋楽を終えた時、自分がこの場にいたことを光栄に思った。そして、新宿梁山泊メンバーと舞台を創り上げた喜びと達成感を味わった。
これからも、これに負けないような経験をしたいと思っている。

ページトップへ