2006.11.06

Category:OB

「人間大好き人間」三好和美(人形劇団員)

 

人形劇団?何だそりゃ、と思われる人も多いかと思います。
そこで、あまり知られない人形劇団の話を書こうと思います。

 

私はここで役者をやっています。といっても、人形劇の役者は何でもします。幕の吊り物からセットを立て、音響、照明も全て劇団の役者が仕込みます。大きい会館や、体育館なら問題はないのですが、幼稚園や保育園、袖が狭い体育館だと、仕込みは戦いです。お客さんが見やすく、舞台が美しく、役者が演じやすく、と工夫しながらどんな会場でも舞台を作っています。上演以外の日は稽古や美術をしたり、事務作業、制作、営業…仕事には事欠かないです。

 

うちの劇団は基本的に人形の操作者が声を出し、芝居をやります。だから常に生です。子どもの反応はその時々によって違い、笑ったり、応援してくれたり、ぐっと緊張してみていたり…様々です。それに対して、こちらも反応する。お互いが舞台を作っている、それが面白い!
『人形』といっても色々な形態があります。うちの主流は棒人形です。どぐし(頭を支えている棒で、人形の背骨)で体を操り、手は差し金で動かします。『ひょっこりひょうたん島』等で見る、あれです。あとは指人形や、仮面、役者が普通に演じるものなどです。

 

人形は「モノ」です。操作者の手が入らなければ、物でしかない。それが演じ手の気持ちで不思議と生きて、その世界を作り出します。人ではなく人形だからできる表現、リアルだけどバーチャルな…。
人形を遣い始めた頃、よく言われたのが自分が演じるな、ということ。自分の体を通して人形が演じる事。例えば、こけて立ち上がるという動きは、人形だからついひょいっと起き上がってしまう。でも、ちゃんとこける時のテンションや起き上がる腰の動き、手を使うこと、細かい動作一つ一つが物に魂を吹き込むのです。まだまだ、私は新米なので修行中ですが…。

 

映画学校にいた頃、人間研究という授業がありました。
一人の人間を深く掘り下げることで、私は多くのことを学びました。ひとりひとりに人生のドラマがある。若造の私はまだまだ考えが浅く、対象者に突っぱねられたりしました。
今も人間相手の仕事をしているのは、やはり人間が大好きだからなのでしょう。子どもの頃の影響はその後に深く関係します。その中の一瞬でも出会えるというのは私にとっても大きな力になります。
映画学校の実習や現場でみんなと本気でぶつかり合った事が今の私を支えてくれているように思えます。学生時代とあまり変わらず、貧乏ヒマなしの汗にまみれた仕事ですが、本当に楽しい。今もお酒を飲んでは役者仲間と熱く語り合い、旅公演では地方のお母さん方や役所の方など、優しくて元気をもらいます。人と人が確かに触れ合える、そんな仕事です。

 

一年のうち、今が一番忙しい時期です。秋の芸術鑑賞で全国各地の小学校や劇場を旅公演しています。同じ演目を毎日やるわけではなく、日替わりで作品が変わったりするので、荷積みが大変です。朝4時起きが続く日々…。家を出るときにまだ星空が綺麗だと少し悲しくなります…。
体力勝負の仕事なので、映画学校生には向いているのではないでしょうか。劇団員を募集しているので、ぜひ卒業後の進路として考慮してみて下さい!

 

今度、大阪で大人向きの一般公演をするので是非観に来てください。先月、東京で公演した時に、こんな舞台観た事無い、と大好評でした。邦楽の生演奏と人形劇の融合。初めての感動をぜひ味わって下さい。

 

人形劇団ポポロ『鬼ひめ哀話』
原作・総合監修/さねとうあきら
演出/山根宏章
公演日…11月10日(金) 18時30分開演
場所 …大阪よみうりホール(千里中央駅徒歩1分)
料金 …前売り¥4000、当日¥4300
連絡先…人形劇団ポポロ pupetpop@pup-popolo.co.jp
TEL 042-344-3389 FAX 042-346-6118
詳しくはこちらをどうぞ→URL http://www.pup-popolo.co.jp

ページトップへ