2007.01.29

Category:OB

「映画監督への旅」小川王子(映画監督)

 

僕は現在36歳8ヶ月。渋谷の小さな映画館で僕の監督した映画が先週末から公開されている。タイトルは「炬燵猫」。僕にとって劇場用映画としては初監督作品になる。

 

映画監督への旅はいつから始まったのだろう。
小学校の時、新宿や池袋でみた名画座のホラーやスプラッタ映画が始まりだったのか?とにかく名画座でよくわかんない映画を幼少から姉に連れられて観ていた。
中高6年間サッカーにあけくれたが最後の夏はあっけなく1回戦負け、デザイン科だったが自分の不器用さに気づきさっさとあきらめていて将来のヴィジョンも何も見えなくなったころ、姉の友人から何故か8ミリフィルムのカメラ、映写機、編集機の一式を興味本位で借りることになった。そしてその機材を使って文化祭で30分のオリジナル脚本の映画を監督したことで映像表現の面白さに取り憑かれ映画学校に行く事を決意する。

 

映画学校時代はあまりマジメではなくバイトばかりしていた。でも脚本や実習だけは一生懸命やっていたと思う。

 

3年時にドキュメンタリーゼミで作った卒業制作「家族ケチャップ」をプロデュースし、PFFで賞をもらったり海外の映画祭に出品させてもらったりした。この作品は同ゼミ生のスタッフである友人が幼いころ離婚した両親を訪ねて当時の彼らの身勝手さを糾弾していく様を、彼自らが出演しながら意図的に過剰な演出をしたドキュメンタリーで、若さゆえの勢いと破壊衝動、暴走から生まれるセンセーショナリズムを狙ったものだったが意図するところには着地せず、能力と認識の不足による「稚拙さ、弱さ、駄目さ、甘え」にまみれて、そのうえ狙いの浅はかさがもろに露呈し迷走したあげく、茶目っ気でごまかそうとしたが失敗しちゃいました。。。というインモラルな大問題作。仲間割れするわ、雪山で遭難しかけるわ、現像所で怒鳴られ、上映すればいろんなところでヒドく怒られた。かと思えば異常なほど絶賛されたり、変に認められたりと極端な反応があり、作った自分たちも困惑してしまうような貴重な体験をした。しかし何であんなにひねくれていたのだろう。今となっては愛すべき作品だしそうとう面白いが、複雑な思いがまだある。

 

映画学校卒業後すぐに支持していたインディーズの映画監督の制作を手伝い、その後Vシネマの制作進行や助監督などをしていたが、その後からここ十数年映画に関わる仕事はしてはいなかった。ただ映像の仕事は続けていた。CMや企業VPのADに始まり、行き着いたミュージックビデオの世界では映画とはまた違った斬新な映像表現に出会い、その仕事にのめりこんでいった。そのうちディレクションの話もくるようになり、その世界では無名ながらもMV監督として独り立ちすることができた。

 

数えきれない程の大小様々な演出の仕事をした。ミュージッククリップを中心にライブ収録、ミュージシャンのドキュメンタリー、音楽関係以外にもグラビアアイドルのDVDやweb上のコンテンツ映像など来る仕事はほとんど断らずに受けた。予算の無い仕事は撮影から編集まで、場合によっては美術やスタイリストまでこなさなければならなかったがその中で自分の映像スタイルを見つけていった気がする。もちろん浮き沈みもあったがなんとか食いつないできた。

 

5年前から「SAKKAKU」という映像による空間演出のユニットを仕事仲間たちと結成し、主に音楽のイベントの映像演出やVJをしたり、それが認められて海外のイベントに招待されたりもした。

 

そんなこんなしているうちに実は正直言って映画監督になる夢など全く忘れていた。何故かといえばおそらく毎日映像に触ってられたからだと思う。

 

3年前、先輩のディレクターがwebシネマを撮ることになり、その編集を担当した事がきっかけでプロデューサーからある映画の企画を渡される。
それが今回の映画「炬燵猫」。
1年かけて原案者と共同作業で脚本を作っているうちはまだ話半分のようなつもりで楽しみながら作業していたが、あれよあれよという間に具体的な日程が組まれいつの間にか監督と呼ばれていたという次第。

 

僕が映画監督になった経緯はざっとこんな感じである。もちろん社会に出てからいろんな荒波に揉まれたし、今もまだ揉まれっぱなし。ただ感想はといえば流れに流され風に吹かれてたどりついたとでもいったようなあっさりしたものだ。もちろん目の前にある事には常に全力で取り組んできたが、どん欲に映画監督になろうとかという努力はほとんどしていない。

 

こんな事書いてたら亡くなった今村さんや他の先生方にひどくあきれられそうだけど、最近はそんな監督もいるって話。まあなってしまった今は映画監督はなるよりも続けていく方が難しいとつくづく感じている。
そんな僕が後輩たちに言えることは
「とことんのめりこんで、疲れたら休め遊べ、take it easy!」

 

さて僕の撮った映画「炬燵猫」はだまし絵のような映画。
ポップでシュールな脱力恋愛ムービーです。良かったら観て下さい。

 

2007年1月27日(土)より渋谷シネ・ラ・セットにて 
1/27(土)~2/9(金) 
10:00~11:21(予告なし) 
15:45~17:20 
17:35~19:10 
21:30~23:05      
※2/10(土)以降時間未定

 

公式サイト、予告篇見れます。
http://ccbb.tv/kotatsuneko/
劇場:渋谷シネラセット 
http://www.cqn.co.jp/THEATER/lasept/index.html – kotatsuneko

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