2007.02.12

Category:OB

「日々考える」山本 昌弘(俳優)

 

2月だというのに、穏やかな風が心地好い今日この頃、以前読んだ村上春樹の「ダンス・ダンス・ダンス」という小説を思い出した。
作品は期待していた分、拍子抜けしてちょっとガッカリした記憶がある。
ただ、「あらゆるものが繋がっている」そんなニュアンスの言葉だけが印象深かった。繋がるにはうまく踊り続けるしかない。
うまく表現できないのだが、つまり身の回りの物語にアンテナを張り、興味を持てという事だろう。
そんな事を思い起こし、僕は今前に向かっていこうとしている。
最近、なかなか味わい深い舞台を見た。吉本ばなな原作、映画「鉄男」の塚本晋也監督が演出する「哀しい予感」という舞台である。塚本晋也監督らしく、何処かにバイオレンスやエロスが詰まっているかと思いきや、吉本ばななの世界観を大事に伝えようとする独特な色合だった。
僕自身も吉本ばななに触れるのが初めてでドキドキしながら観た。弥生という女の子を軸に、登場人物皆が実に善良で純粋な者ばかりであり、それぞれの哀しみが伝わり、何だか温かい気持ちになったまま幕を閉じたのだった。
「あらゆるものが繋がっている」という言葉をまた思い出した。この舞台と今、僕自身が稽古をしている舞台の人物達の共通点である、皆が善良で純粋というのが重なった感じになった。
一つが繋がり出すと、また一つと次から次へと繋がり出す。
気になる相手とのコミュニケーションにもどこか似ている。
何でもない様な事が、何かあるようになる。そして、面白くなる日常に誘われて、もっと他の事が気になり出して、他者との共通点を探る好奇心が沸いてくる。
そんな高揚感を抱いたまま、僕は今日も分かち合える何かを探しに、稽古に向かって電車に揺られている。何かに繋がり出すのことがないかな・・・と思い、アンテナを張り続ける日々が始まるのである。

 

『最終戦争を駆ける!』 に出演します。 
2/22(木)~ シアターブラッツにて http://gekidansara.web.fc2.com/

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