2007.03.19

Category:OB

新宿遼梁山泊で学んだ役者の定義」染野 弘考(俳優)

 

「役者とは何なのだろう」
即答するのは難しい。ただ、『役者』というのは、演じることということだけが仕事の全てではないということだけは言える。これは、新宿梁山泊「エビ大王」に出演してみて分かったことだ。道具を作ったり、チラシを配ったり、テントを建てたり・・・。1つの芝居を作るためにあらゆる努力をする。これが、(新宿梁山泊の)『役者』の定義なのではないか。

 

振り返れば、朝から晩まで大工仕事からのスタートだった。
新宿梁山泊では、道具作りも役者の立派な仕事だ。最初の役者としての仕事が、セット作りだった。そして、それから舞台稽古がある。セット作りで疲労困憊の僕はヘロヘロになってしまった。そんな中で、プロンプ(プロンプトの略。立ち稽古のときに、役者のセリフ忘れやセリフ間違いをその場で手助けすること。その係をプロンプターという)や代役をこなさなければならない。休む暇なんてもちろんない。疲労と緊張で頭は混乱。
「だから、台詞も飛ぶよ。段取りも忘れるって。仕方ないだろう。」
なんていう甘えが通じる訳もない。セット作りの作業でも、舞台稽古でも、怒られ続ける日々が続いた。余談だけど、体重は2週間で2キロ減少した。
こうした作業と稽古は、韓国に行っても同様に続いた。
大衆の中の1人という役以外にも、翁さんの役を手に入れることができた。大衆として出るシーンがただでさえ多いのに、翁さん役を入れると、ほぼ全てのシーンで舞台の上にいる状態。ほんの一瞬でさえも気が抜けない。お陰様で更に体重が2キロ減少。
舞台の初日前夜にはこんな指示が出た。
「照明さんを手伝ってから帰って来い」
内心、「ホントかよ」と思った。指示されるがまま、ひたすら照明さんの手伝いに専念した。段々、舞台が明るくなっていく。手伝いながら思い始めた。「舞台が明るくなっていくのって、なかなか楽しいもんだなぁ」と。そんな時だった。
「コケコッコー!」。朝?
鶏の鳴き声が聞こえる。なんと、それはライトの光ではなく、太陽の光だったのだ。本番当日の朝7時に僕の作業は終わった。睡眠時間2時間で初日を迎えた。
韓国では、3日間で1500人もの観客が足を運んでくれた。初めての芝居で、こんなにも多くのお客さんの前で演じられるなんて、なんだか夢のようで、有り難いと思った。
自分のやれることはまだ少ないけど、立派な『役者』になれるようにがんばっていこうと思う。

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