2007.03.26

Category:OB

「贈り物」金子 幸世(舞台音響)

 

学校を出てから 舞台音響の仕事をしています。この3月で、丸5年。本当に『あ!』っという間に過ぎました。

私の所属している会社は、主にお芝居の効果音や音楽を出す『効果』が仕事です。
『効果さん』は芝居に合わせて音を出して、お芝居を成立させるのが役割です。が、最近ちょっと思うのは、その事にプラスして、お客さんに音を聞いて記憶を蘇らせてもらう事ができる…のではないかな? と、いう事です。
私は 音を聞いて 目の前に情景が浮かぶ事があります。
風の音で 昔住んでいた家の近所の原っぱが浮かんだり、
雨の音で 小さい時に一人でお留守番をして心細かった事だったり、
子供の声を聞いて 小学校の下駄箱を思いだしたり…… 
現実に行った事のある場所や、いつ どこで見たのかなんて、全く覚えていない情景が浮んできたりもします。普段は奥の奥、底の底に隠れている記憶も 音を聞いて甦ることがあると思うのです。そして、記憶と 一緒にその気持ちも。
「心に残る…」というのは、もしかしたらそういう事なのではない かな?と思ったりもするのです。

お芝居は楽しんで見てもらうものだとは思うのですが、楽しんでもらう…というのと心に残る…というのは、別の事なのではないかと、思っています。観ていた時気がつかなかったお芝居の登場人物の気持ちを、 その後、ふと思い出して考えてもらえたら… 贈り物(とでも言いましょうか…) を受け取ってもらえたという事なのではないでしょうか?そして、それが音がきっかけで思いだしてもらえたとしたら…街の中や家や、いろんな所で耳にした音で そのお芝居をふっと思いだしてもらえたりしたら、それはすごい事なんではないかなと。そういう音が作れる様に精進したいなぁと思っています。

ページトップへ