2007.06.04

Category:学生

「役者のいろは」小崎 祐基(俳優科1年)

 

初めてプロの撮影現場に行った。
クラスメイトの飯島・笹反・住吉と僕が担任の山本先生の推薦によって、NHK『わたしが子どもだったころ-養老孟司-』というドキュメンタリー番組中の再現ドラマに出演させてもらうことになったのだ。

 

僕たちが今回与えられた役は、1947年に孟司少年の兄を含む、4人の左翼青年たちの役。警察の看板を盗んで来たり、人の家で宴会をし、ドンチャン騒ぎするような、(可愛らしくもある)ロクデナシ達を演じることになった。
ちょっとした自慢だが、4人のうち僕だけ孟司君との会話のシーンがある。しかも撮影中にイモを食えるのだ。
(おいしい役をいただいたぞォ)
なんて調子のいいことを考えてるうちに、撮影日になった。

 

ロケ地は浦安市にある古めかしい日本家屋だ。畳の匂いを嗅ぐと、不思議と懐かしいという感情がわきあがってきた。よくよく見ると備品も当時の物を再現してある。
(ふうん、昔の人はこんな暮らしをしてたんだなァ)
なんとなく感慨深い。

さて、肝心の撮影はというと…。
本番の前に、練習で『青葉茂れる桜井の』を歌う。これは当時、流行った曲のようだ。みんなで1,2の3で…

・・・
青葉茂れる桜井のォー、里のわたりの夕まぐれェー
木の下影に駒とめてェ、世の行く末をつくづくとォ
忍ぶ鎧の袖の上にィー、散るは涙かはた露かァー…

・・・
みんな、歌えるのか怪しい。監督も苦笑いである。

 

次に孟司少年とイモ男のシーン。
このイモ男、孟司くんの家に勝手に上がりこみ、イモをもらったくせに素っ気ない態度をとるいう図々しいヤツだ。その図々しいヤツを僕は演じるのだ。
(少年に影響を与える、という点では重要な役だな…)
そう思うと、必要以上に力んでしまった。シーンはイモ男が本を読んでいるところから始まる。僕も普段本を読んでいるのに、どんな姿勢で読んでいるか忘れてしまった。監督の言われるがままに、読むポーズを変えていく。
(くそォ、俺は何もできないじゃないか…)
悔しかった。手も足も出ないなんて、思ってもいなかった。しかも、まだ練習段階なのに間違えてイモを食ってしまった。もう恥ずかしいさでいっぱいだ。

 

同じシーンの別カットを撮る際、大道具を手伝ったほうがいいのかなと思ってたけど、孟司少年役の光輝君を見て驚いた。ズッシリと構えて待っているのだ。その姿をみて、プロの役者さんに教えてもらった言葉を思い出した。
「役者は待つのも仕事だよ」
改めてナルホドと感心した。自分の出番が来るまで、落ち着いて待つ。
(これがプロの姿勢か…)
僕も彼同様にズッシリと構えてみる。でも、緊張がぬけないせいで撮影中に手が震えてしまった。

 

この撮影で、僕の出番は終了。まだまだ、足りないものばかりだ。でも焦らずに一歩一歩落ち着いて歩いていこう。

 

BSハイビジョン『わたしが子どもだったころ「解剖学者 養老孟司」』
放送日 :2007年 6月13日(水) 
放送時間 :午後10:00~午後10:45
再放送:6月15日(金)午後0:00~午後0:45、6月24日(日)午前8:00~午前8:45

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