2007.06.25

Category:学生

「俺たちの合宿」久我 桂介 (映像ジャーナルコース2年)

 

今年の5月27日、僕達2年映像ジャーナルゼミは、群馬県吾妻郡にある中之条町を訪れた。日本映画学校の2年映像ジャーナルコースでは、毎年この時期になると短編ドキュメンタリー作品を制作すべく合宿実習を行う。1週間程度の短い期間で、現地の人々を取材し、企画を立て撮影をするという実習である。今年の取材地も昨年に引き続き、この中之条町に決定した。山地の中にある小さな山里、どこか懐かしい雰囲気が漂うこの町で、僕達はこの土地に根を下ろし生活を営んでいる方々を取材した。

 

猟友会の山田力夫さんについて、彼を取材したいと希望した僕、越智、尾崎の三人で班を組んだ。(猟友会とは、野生鳥獣の保護や有害鳥獣駆除などを目的に掲げた、狩猟者のための公益団体である。)山田さんは、代々受け継がれてきた農地でコンニャク等を育て生計を立てている。狩猟もまた、祖父の代から受け継がれてきたものであり、彼にとって最も大切な道楽の一つである。農業を営む傍ら、夏は猟友会の一員として有害鳥獣の駆除を行い、冬の狩猟期間には、山へ猟に出かける。そんな山田さんの日常を見てみたい、そして何より狩りの瞬間を見てみたい、このことが僕ら三人の共通した目的だった。

 

今思い返せば、はじめから山田さんという大きな存在に呑まれていたのかもしれない。彼の日常を外から覗くという本来の目的を忘れ、いつのまにか山田さんと狩猟について教わりに来た学生達という構図を僕達自ら作ってしまっていた。山田さんからも何を撮りたいのかわからないと言われる始末、講師の方々にも散々怒れられた。失敗ばかりしながらも、様々な方々から頂いたアドバイスを頼りに、熱意だけで予備取材からの5日間を走り抜けた。

 

そして撮影最終日。山田さんは、その日は共同の畑の仕事があるため取材はできないとのこと。結局、狩りの瞬間も取れずにいた最後の日、僕はなぜか一人、朝早く目を覚ましてしまった。体は疲れ果てているはずなのに。僕は、外にでて、朝の匂いを嗅ぎ、こんな早朝からはじまる農家の一日を想った。ベッドに戻り、物思いに耽っていると、携帯のバイブの音がうるさく響きはじめた。朝の5時、皆まだ寝静まっている。誰かの目覚ましかと思っていると、突然、僕の頭の中で何か閃きのようなものが走った。なぜだかわからないが、直感で山田さんからの電話だとわかった。そして、僕達はその日、イノシシ駆除の瞬間をカメラに収めることができた。その日は朝から晩まで、神経が研ぎ澄まされ興奮しっ放しだった。にもかかわらず、今自分が何をすべきか冷静に考え、行動することができた。撮影最後の日、不思議な一日だった。

 

6月4日、とにかく肉体的にも精神的にもハードだった合宿が終わった。僕達は僕達の映画のために何ができて、何ができなかったのだろう。
ただ今、編集の真っ最中だ!

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