2008.01.28

Category:OB

「これで良いんですかね?」兼重淳(映画監督)

 

生まれ育った赤城山の麓を離れ、夢膨らませ降り立った小田急線「新百合ヶ丘」駅。
群馬から見れば、「大都会・神奈川県川崎市」
だって、東京と横浜の間にあるんだよ。
入学試験を受けた「横浜スカイビル」の周りはあんなに都会だったし、
きっときっと……
………………
………………
広がる空き地。
ススキ野原。
消防署、区役所、セブンイレブンにパン屋「ケルン」。
……………
おーい、キャッチーボールやろうぜー!

 

毎日、小学生の様に遊んだ。

 

2年になり、隣の空き地で工事が始まった。どうやら同じく専門学校が建つらしい。
オイ知ってるか!どうやらお嬢様ばっかり通う音楽学校らしいぜ!
しかも宝塚歌劇団の養成学校なんだってさ!
夢と一緒に、違う妄想まで膨らんだ。

 

月日が過ぎて、完成した音楽学校はピアノの形をしていて、俺らの学校と良くマッチしていた。
……なぁ、ウチの学校…ってさ……ピアノの椅子みたいだな…

 

そんな外観の学校に通うこと3年、卒業時に学校長・今村昌平先生が言った。
「これから現場でプロとしてキャリアをスタートさせる君たちに願うこと、それは、キャメラ横で首を傾げ『これで良いんですかね?』と言う心を持ち続けて欲しい」

 

当時解らなかった言葉の意味が、次第に身にしみるようになった。
「決して流されない、決して満足しない、決してマンネリにならない、追い求める事を止めない」
まだまだたくさんの意味がこの言葉には含まれている。

 

素晴らしい、素晴らしい、凄すぎる、大きすぎる。
少しでも近づきたい、どうすれば………

 

そして20年目の今日も自問する    『これで良いんですかね?』

 

(日本映画学校 映像科1期生)

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