2008.03.10

Category:OB

「校長先生とオシゴト」酒井俊之(プロデューサー/映画研究部)

 

それはつい先月のこと。なんと、映画学校の校長先生である佐藤忠男さんと仕事をする機会があった。さすがにこういったシゴトもしばらく続けていると、ちょっとやそっとじゃ撮影現場で緊張するなんていうことも少なくなってくる。ところが、迎えるは“母校の校長先生”なんだとあらためて思うと、「学校で学んだ成果、さぁお手並みを拝見しよう」と試験を受けているような、ヘタをすれば「もう一回勉強し直し給え」と言われてしまうんじゃないかとか、なんだか少々の緊張感と共に、妙な気分に陥ってしまった。

 

ボクが学校にいた頃、映画評論家である佐藤氏はまだ校長先生ではなく、「日本映画史」のセンセイだった。街の名画座よろしく、日本映画の名作の数々を鑑賞することが出来たこの授業、映画もさることながら、佐藤センセイの講義が楽しみで仕方がなかったんですと言えば美しいハナシなのだが、ところがあまり真面目に講義を聴いていたという記憶がない。というわけで、今回のシゴトを始める際に「映画学校の卒業生なんです」とセンセイに告白した時にも、実は少々の後ろめたさがあったのだ、というのはここだけの話。校長先生にはナイショだ。

 

しかし、20年を経てまさか再び佐藤先生の“講義”を聴くことが出来るチャンスに恵まれるとは、縁というものはまったく侮れないものである。シゴトを通して、ようやくじっくりと“拝聴”することになった日本映画史。あぁそうだったのかと思わず膝を打つエピソードや、映画史と共に歩んできたからこそ伝わってくる、リアルな証言の数々。こんな貴重な話はそう滅多に聴けるものではないはず。分かり易く、しかもすこぶる面白い。その時、気分はすっかり学生の頃に戻っていたのかも知れない。

 

卒業してからというもの、月日の流れと共に映画学校の記憶も薄れつつある。いつの間にか映像業界の垢にまみれてしまった自分の身を嘆きたくなることも、少なからずある。しかし、久しぶりに気持ちがキュッと引き締まる思いがした。まだなにも無かった頃の新百合ヶ丘の駅前の風景を、ふと、思い出した。電話も洗濯機もない柿生のアパートから、毎日バイクで通ってたっけ。うん。まだまだこれから、もっと頑張れる。

 

さて、前置きが随分と長くなってしまった。その佐藤校長にご出演して頂いたのは、ただいま日本映画専門チャンネルでオンエアされているオリジナル番組「二十歳女優に恋して。」。果たしてどんなプログラムか。3月いっぱいはリピート放送が繰り返されるので、これは是非、実際にご覧になって確かめて頂きたいと思う。

 

(日本映画学校 映像科1期生)

 

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