2008.04.22

Category:学生

「僕の18年間+1年」北川帯寛(映像科2年)

 

「何もないたって、何かあるだろ?」
「いやぁ・・・」
「じゃあ、お前一体18年間何してきたんだよ?」
「・・・」
「ほんっと、何も考えないで今まで生きてきたんだな」

 

これは、一年の夏休み課題である『200枚脚本』の実習での先生と僕の会話だ。
ちょっと前までしょうもない、ただの高校生だった僕は、いきなり(知ってはいたけど)200枚のドラマを書けと言われてかなり悪戦苦闘していた。
クラスでも書き始めるのが一番遅かったと思う。
そんな僕を見るに見かねてか、先生は「お前の実体験を告白してみろよ。そして、それをありのままに書いてみるんだよ」とアドバイスをくれた。
「えぇ・・・」僕は余計悩んだ。

 

「誰でも一つは傑作が作れる。それは自分の体験を書くことだ」
確か前に新藤兼人監督(シナリオライター/映画監督)もそんなこと言ってたなぁ。でも、今までの体験たってな・・・。
僕は先生の言葉をそのまま家に持ち帰り、自分の過去を懸命に掘り下げていった。
大失恋、裏切り、いじめ、挫折、家庭崩壊、アル中、ドラッグ、婦女暴行・・・あるわけない。

 

僕はもう先生に会うのが億劫だった。
何にもない・・・。翌日、先生に正直にそう伝えると最初の問答になった。
要するに、僕にはトラウマ的体験がひとつもないのだ。僕はずっと逃げの人生を送ってきた。
トラウマがないことがもはやトラウマになってしまった。
そうして元来出不精な僕は、夏休みの間ずっと家で一人ウジウジすることになりました。
我ながらこんな奴は面倒くさいです。こんな自分とはさっさとおさらばしたい、とばかり考えています。
その後の短編制作実習もまだまだ頑張りが足りなかったと思います!まだまだ、まだまだです。

 

早いもんで、こんな自分でも今月から二年生。
新入生の皆さん、上級生なんてこんなもんですので(僕だけ?)、廊下で会ったら気軽に声かけてください、ね。

 

(日本映画学校 映像科22期生)

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