2008.08.19
Category:学生
役名「池田奈美」。自由奔放で喜怒哀楽が激しくいつでもみんなの中心。
私には似ても似つかない性格。真逆といってもいいぐらいに彼女は明るかった。私が初めて彼女に出逢ったとき、私は彼女に羨ましささえ覚えた。
私にないものを彼女はたくさんもっていて、私がやりたいことを彼女は自然にやっていた。
映像演技実習のビデオエチュードが始まって私は彼女のことばかり考えていた。
なぜ彼女はこんな笑い方をするのか、なぜ彼女はこんなにも強がっているのか。
彼女の過去を考え想いを共有する時間を重ねるほど、彼女は魅力的になっていった。
「俺は松下仁美を撮ってるんじゃない。池田奈美を撮ってんだ。」
言葉に詰まる。
ナチュラルにナチュラルに、、と意識をすると普段の私に近づけてしまいそれは池田奈美のナチュラルではなかった。
同じ台本を読み同じ文字を追っているのに私は何も拾うことは出来ていないんだ、と自分の技量のなさ表現の乏しさに情けなくなった。
躊躇しながら動く私を見て周りはどう思っているのか、そんなくだらないことさえも考えた。
そんな時、この言葉を思い出した。
“お前のことを笑う奴はここには一人もいないから”
俯いていた私に監督が最初に言ってくれた言葉。
私は一気に恥ずかしくなった。
私は私でないはずなのに何を気にしているのだ、と。
カチンコの音と共に恥をかけ。たくさん悔しい思いをして考えろ。
私は池田奈美としてカメラの前に立ち、息をする。思いっきりを楽しむのだ。
7月10日ビデオエチュード上映会。
大きなスクリーンに映った私ではない私が大きな声で泣いたり笑ったりしていた。
悔しかった。情けなかった。だけどなぜか誇らしかった。
このビデオエチュードを通して出逢いたくさんの言葉を交わし同じ時間、空間、想いを共有した監督、カメラマン、スタッフ、キャストの”思いっきり”がそこには詰まっていたから。
この出逢い、繋がりは私の一生の財産である。
そして、私と一緒に泣いて笑って息をしてくれた池田奈美にたくさんのありがとうを伝えたい。
(日本映画学校 俳優科23期生)