2010.02.23
Category:OB
たとえ99人がけなしても、この人1人が認めてくれればいい。
創作者には、必ずそんな存在がいる。
僕にとっては映画監督の山下敦弘監督がそうだ。
「リンダ リンダ リンダ」や「どんてん生活」で知られている山下監督と僕は、年齢と長編1作品目を発表した時期がほぼ同じ。
劇映画とドキュメンタリーの違いはあるけれど、互いの作品に敬意を表してきた。
それは、絶対に嘘をつかず、本音で向き合うということだ。
山下君は新作が完成するたび、公開前に行われる試写会によんでくれる。僕は緊張する。
だめだったらどうしようと思うのだ。ヒット作の「リンダ リンダ リンダ」を僕ははっきりだめだと言ったことがある。
反対に前作の「天然コケッコー」を見たときはぼろぼろ泣いて、
固い握手を交わした。
当然、僕の映画を山下君が見るのも緊張する。
一番嬉しかった感想は、今公開中の「ライブテープ」についての言葉かもしれない。
「すごく嫉妬する」と山下君は言った。
この映画のカメラマンは大学時代から、山下君とコンビを組む近藤龍人君。
その彼の新しい顔を僕が引き出したという。
僕だって何度山下君の映画に嫉妬したか。
「嫉妬」なんて言葉、なかなか言える相手はいない。
友に感謝している。
平成22年1月26日付け 日本経済新聞「交遊抄」より
(日本映画学校 映像科11期生)
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