2010.10.19

Category:OB

「息抜きに」安住洋之(TVディレクター)

 

明日から編集期間なのに全く良きプランが思い浮かばず、
恥ずかしながらこれは気分転換で書いてます。

 

フィクションの世界に憧れ、映画の学校に入った自分が、
今、生きた人間を描く企画で、頭を悩ませている。

 

一昨日からデスクトップ上にある空白のコメント原稿。
指は宙で踊ったまま、キーボードを叩いてくれない。

 

描きたい、けど描けない。
この苦しみはアレだ、もしかしたら人間研究に近いのかも。
もしかしたら、と前置きしたのは、
学生の頃、まともに取り組んだ記憶がないから。
真剣さのかけらもなく「映画(フィクション)撮りたくて入校してんのに・・・」と
おこがましくもボヤいてたことしか覚えてない。
そして、あの空気。
何をしたら良いのかがわからず、
日々むやみに息苦しさだけがあったっけ。

 

それが今にいたり、日夜テレビの番組作りに精を出してる。
仕事の大半は取材で、フィクションとはかけ離れた世界で
生きた人間と向かい合う機会を自ら作り出し、
喜々として現場に飛び込んでいく生活だ。

 

いつからこうなったんだったか。
学生時代の友人からは会う度に「また仕事変えた?」な反応。
「ん?」っと首をかしげる自分。
思えば本人は至って一貫したことをやっているつもりなんだ。

働くようになってから、すぐに気づいたのは
学生の頃に抱いてた「映画を撮りたい~」は、漠とした希望だったこと。
卒業後に入った映画の企画制作会社で、
「映画を撮りたい~」を、実現せんと動くうち、
それが「こんな企画がやりたくて~」にとって代わり、
いつの間にか、その内容が最も実現しやすいだろうテレビ制作に移った。

当時は夢中で何をやりたいかを突き詰めていっただけだけど、
結果として、今になりようやく息苦しくない生き方ができてる。
最初から、そうしとけばって話ではあるけれど、
この遠回りのプロセスが重要だったと今にして思う。

 

自分が今いる業界、意気揚々と入ってきた若人が
一月も持たず辞めていく惨状だ。
職業への憧れだけに突き動かされ、飛び込んできては撃沈していく。

 

仕事が厳しいというのが理由だけど、「耐えろ」とは言えない。
それが彼らなりの遠回りかもしれず、
そこに次に繋がる何かを見つけているのかもしれないし。
自分にとっての映画学校から今までのプロセスが
形を変えているだけだと思ってしまう。
進路を変えても、時間は戻せないんだし、
彼らがやりたい何かに少しでも近づいているように祈るばかりだ。

 

今まさに悶々している自分。
前向きに考えれば、次へと繋がるステップだ。
もはや若いとは言えない年だけど、
この遠回りの精神は持続していきたいと思う。

 

・・・・・・以上、「急がば回れ」を遠回りして言ってみました。

 

そして、以下、悶々としている企画の宣伝です。

 

NHK総合/ゆうどきネットワーク
『あの時を忘れない~漫才師・内海桂子さん~』
10月22日(金)放送予定

 

映画学校でも講師をしておられる
内海桂子さんの人生の転機となった当時の様子を
インタビューを交え描いていきます。

 

写真は内海桂子師匠ご本人と。
(自分の顔のことは気にしないでください。一瞬、気を抜いた罰です。)
内海さんはロケ中は自分の要領の得ない質問に、
丁寧にひとつひとつ根気よくお答えいただき、恐悦至極でした。

 

現在は都々逸や踊り中心に舞台で活躍されている内海さん。
感化された自分もひとつ。

 

ひとつの人生、ひとりの生き様、紐解き気づく、百のお話。

 

なんつって。ゴロだけで折句にもなってませんが。
さてさて、お後がよろしいようで。
(日本映画学校 映像科18期生)

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