2011.11.15

Category:教員

「不安の行方」韓東賢(日本映画大学教員)

 

はじめまして。こんにちは。アンニョンハセヨ。

 

まだ1年生しかいない日本映画大学で、前期は「韓国語」と「フィールド調査方法論」、
後期は「社会学入門」の授業を担当している韓東賢(はん・とんひょん)と申します。
東京生まれ、『GO』や『パッチギ!』で有名(苦笑)な朝鮮学校に通い、在日コリアン
メディアで働いた後に日本の大学院に進み、この道に入った在日朝鮮人二世です。

 

現在の研究テーマは、自分が育ったコミュニティでもあるのですが、朝鮮学校と
その周辺の在日朝鮮人コミュニティです。
(この辺に興味がある方は2年後期の『エスニシティ研究』や3~4年後期の
『朝鮮半島の近現代社会史』にもぜひ!と、せっかくなので宣伝)

 

まだ1年生しかいない大学と言いましたが、私もこの4月から、大学化したばかりの
この学校で教えることになったので同じく新入生のようなものです。
当然、1年生の皆さんと同じように期待も大きかった一方で、不安だらけでした。
だって、自分の就職先がどういうところか、実際に仕事が始まってみないと
わからなかったわけで…(普通そんなことめったにないですよね)。

 

ま、そんなこと誰にもわからなかったわけですし、そもそも大学設置の認可申請が
通るかどうかもわからなかったという…(通らなければ就職内定先がなくなる!)。
とはいえ無事認可が下り、ちょうど去年の今頃から初の入試も行われ(この段階
から関わり始めました。私が面接した1年生もいますよね?)、今年4月5日の
入学式を迎えました。

 

入学式で印象に残っているのは佐藤忠男学長の式辞です。
式辞の中で学長は、大学の前身の日本映画学校が輩出した現在活躍する卒業生として、
『フラガール』や『悪人』で日本を代表する映画監督となった李相日さんと、近々公開される
最新作『トーキョー・ドリフター』の前評判も高い(私も見ました。試写会場には学長も
いらしてましたよ)、ドキュンタリーで活躍する松江哲明さんの2人の名前をあげました。

 

そして学長は、「在日朝鮮人」という言葉を使って李さんの『青~chong~』、
松江さんの『あんにょんキムチ』という卒業制作作品にまつわるエピソードを語りました。
そんな学長の式辞を壇上で聞きながら、「大丈夫、やっていけるかも」と強く思ったことを
はっきり覚えています。

 

良くも悪くも色んな意味で規格外の大学で、不足している物やことや人も多いし
それがマイナスに働くことも少なくないけれど、この部分だけは確実に私にとってプラス、
いや信頼に値する「何か」でした(もちろん、他にもプラスに働いている部分はたくさんありますが!)。
学長が入学式の式辞で、「在日朝鮮人」という言葉で在日朝鮮人について肯定的に
語る大学はおそらく他にないでしょう。
それは、私にとってはかけがえのないものに思えました。

 

それがどういうことなのか。なぜ私がここまでかけがえのないものだと思ったのか。
ここで説明はしないことにします。でも、とくに在学生の皆さんには、その意味を
考えてみてもらえるとうれしいかもしれません。

 

開学から半年以上が過ぎました。皆さん同様、私にとっても本当にあっという間でした。
私個人としても、また組織としても、相変わらず課題山積ではありますが、
熱意ある学生、教職員の皆さんのおかげで、楽しく過ごしています。
まだまだ不慣れで苦労する部分も少なくありませんが、目的意識がはっきりしていて、
問題意識があり、物を考えている、考えようとしている学生が多く、
授業をしていてとてもやりがいを感じます。

 

在学生、教職員の皆さま、今後ともよろしくお願いします。
そして、これを目にした本学に興味を持って受験を検討している方にも、この文章が
何かの参考や示唆になれば幸いです。

 

(日本映画大学 准教授)

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