2013.05.14

Category:OB

「稽古を重ねてつくりあげる舞台」平松多一(劇団民藝 制作部)

6月20日から開幕の『無欲の人~熊谷守一物語』の準備に追われています。
「袴が嫌いだから」「これ以上、人がくるようになっては困る」などと答えて文化勲章さえ辞退してしまったという熊谷守一。

日本洋画の歴史ともいえるその画家の生涯を描いた舞台が『無欲の人~熊谷守一物語』です。

 横浜から数えると演劇界で活躍する卒業生も結構いますね。
劇団1980、ケラリーノ・サンドロヴィッチ、鄭義信、千葉哲也……ぱっと思いついただけでも、岸田國士戯曲賞や読売演劇賞、紀伊國屋演劇賞受賞者もいらっしゃるそうそうたる顔ぶれ。
創設者の今村昌平監督ももとはといえば、早稲田の学生演劇出身でした。
「俳優は観客を前にして演じて鍛えられる」
と語っていたのを何かの折に聞いた覚えがあります。

あの黒澤明監督は、クランクインの数か月前に出演俳優に召集をかけてリハーサルを何度も何度も行ったそうです。
三船敏郎級の大スターをそれだけ長く拘束されては、財政的にはたまったものではありませんが、稽古を重ねて綿密に芝居をつくりあげる舞台のやり方を取り入れたとのことで、黒澤監督だから許されたようです。

 私が、かつて「卒業公演」で関わった俳優志望の学生さんの中には「テレビにでてかっこいいことをして女の子にもてたい」というそれだけの動機を励みに、日々、学校の授業とは別のことに頑張っている人もいました。
そんな彼らも、役をもらい稽古場で演出家から山のようなダメ出しをくらい、うちのめされていくうちに「テレビに出たい」とか「かっこいい」とかどうでもよくなって、ひたすら「演じる」ことに没頭していきました。
たった数か月の稽古期間に、人が変わったようになってしまう人もいました。
私は、本当に驚いて、そこまでさせる“舞台”とか“稽古”って何なのだろう、と思いました。

 『無欲の人~熊谷守一物語』は、明治の終わりごろから昭和の中ごろまでが舞台。
まだ携帯もパソコンもない時代の人びとのちょっとユーモラスな物語です。
学生割引3150円の申込みは、☎044-987-7711   劇団民藝までどうぞ。
稽古場はしんゆりのちょっと先の黒川ですが、公演会場は新宿・紀伊國屋サザンシアターです。

(横浜放送映画専門学院 映像科11期生)

劇団民藝ホームページ>>http://www.gekidanmingei.co.jp/

 

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