2013.09.24

Category:OB

「『わくわく映画づくり!』レポート」曽根大樹(株式会社曽根印刷)

 

はじめまして、 私は日本映画学校第18期映画編集コースを卒業した曽根大樹と申します。
今年閉校した日本映画学校のホームページや、過去の卒業制作上映会に関するデザインを手掛けてきました。
今回の「日本映画大学わくわく映画づくり!」とは、麻生区役所と日本映画大学の企画であり、

夏休み期間中の3日間で地元の小学生に大学生が映画づくりを教えるというものでした。

 

 

指導する大学生はボランティアスタッフではなく、3年次単位取得科目であるシネリテラシー演習の受講生10名が参加しました。
私はそのメイキング制作として参加しました。

※シネリテラシー演習とは
映画(シネマ)を論理的に読み解き、映画(シネマ)を創ることをいいます。シネリテラシーの実践は、オーストラリアの教育者が2001年に始めた実践的な教育。映画を初等・中等教育の現場に本格的に取り込み、『映像を深く読み解き・書く過程=映画の製作』を通じて、つまり、子供たちに共同作業を通じて人間教育、コミュニケーション能力の育成や学習意欲の向上をはかる教育のことです。

 

子供達の映画づくりはのべ3日間に渡り、シナリオから上映に至る全てを子供達が率先して行いました。
メイキングは「夏休みのよい思い出づくりに」という趣旨のもと、DVD特典として完成した子供達の映画と一緒に収録されます。

 

初日は主にシナリオづくりでした。
プロットからシナリオを書くまでは当然座学です。思ったことを書きとめるのは大人でも難しいことです、相当エネルギーを抑えこんでいたに違いありません。

 

 

 

その後の撮影機材に触れた瞬間、目を輝かせて機材で遊ぶ姿といったら…すごいものでした。
マイクやカチンコを振り回す子供達に圧倒されながら、機材の取り扱いを丁寧に教える学生達の姿が印象的でした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

選ばれた2本のシナリオはバライエティーに富んでいました。
『みさちゃん』佐藤美咲と佐藤みさき。同じ名前の二人に待ち受けるラストとは?
『ピーマンとマラソン~やればできる~』夢の中で魔女と出会った奈々夫は、苦手を克服することができるのか?
子供目線のストーリーなのがとても素敵だと思いました。

2日目はシナリオを元に2班に分かれ撮影をしました。
撮影場所を決めるロケハン、全員でシナリオを読み合わせる本読み、リハーサルを経ていざ本番。講師の方と学生の指導の元、プロの現場と同じ段取りで進められました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とてもよかったことは、子供達がみな元気でやる気に満ちていたことです。
「ここから全体の画を撮ります!」
「主人公は本気で走るのか、走るのが苦手だから少し遅く走るのか、どっちですか?」
「こっちのセリフの方が日常的でいい!」
どれもメイキングに入れた子供達の言葉です。
監督役の子がお芝居をみんなに伝え、カメラマンが画を考え位置を決めて…という、それぞれ決められた役割をとても楽しそうに務めていました。
その空気感が映画学校の卒業制作現場と重なり、子供達の可能性に美しさを思いました。

 

3日目は編集。
撮影した素材をつなげた瞬間、子供達から驚きの声が上がり、編集コース出身の私としては思わずニヤリとしてしまいました。
カットとカットのつながりを考えたり、音楽や効果音を加えるなど様々なパターンを考えたり…映画づくりを全身で体験しているように見えました。

 

 

大人達の予想に反して子供達の作品は全て無事に完成し、その後の発表会では6本の映画を上映しました。
上映後はひとりひとり舞台挨拶をするなど、たった3日間でこんなにも子供達の成長を目撃できるとは思わず、今回メイキングとして携われてよかったと思いました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今回のワークショップに声をかけていただいた時、仕事をいただいた以上に嬉しかったことは、子供に映画を教える現場に立ち会えたということでした。
ご存知の方は多いかと思いますが、オーストラリアでは小学校で映画づくりの教育が行われており、そういった映画の読み書きの教育をシネリテラシーと呼びます。

 

学生時代に小栗康平監督の番組でその名前を知り、大変興味を持ちました。
偶然か同時期にオーストラリア映画講座が映画学校で行われました。当時のテキストには私の愚かな質問が掲載されています。
「学校で映画を教えるというのは、映画の観方を広げるためだけなのでしょうか」
それに対して来場した講師の方に、次のような答えをいただきました。
「ただ観るばかりではなく、映画を観ることによって、つくり手ももっとおもしろい映画をつくるだろう。
若者達が文化に参加できたら、もっとおもしろいグローバルなものが生まれるだろう。それには共通言語としてシネリテラシーをもってして、みんなで共通に文化をシェアできればいいのではないかということです」
文化をシェアする。…なんだかとても今風の言葉に聞こえます。

 

今回のワークショップが、参加した子供達の映画…いや文化に触れるいい機会になればと思います。
(日本映画学校 映像科18期生)

 

 

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