2015.03.10

Category:OB

「拝啓、『スーパーローテーション』様」小泉将臣(俳優)

 

日本映画学校最後の俳優科として2012年に卒業して、3年が経とうとしている。
最初の授業で担任の天願大介さんから言われたことは今でも鮮明に覚えている。
『君達には才能がない。ここに入ってきたということはその証だ。』、
『お前達がバカなのは親のせいだ。物を知らないのは自分のせいだ。』。

 

1限が終わる頃には『君』から『お前』になっていた。
希望を持って入学してきた人間にとっては強烈過ぎる始まりだった。
演技とはその人の生き方を持ってしか表出し得ないものだから、演技指導は時に人格否定にもなり得る。

 

そして実習のたびに監督たちから『お前らなんか卒業したら、アップで撮ってもらえる機会なんかない』と言われる。
腐っていく俳優科陣を見て、自分だけは違うと思いつづける。
皆、その繰り返しの2年間だったと思う。

 

監督たちから言われた言葉は今でも新鮮な言霊として、僕の原動力になっている。
本当にありがたい。
腐る俳優なんかいらないし、実際卒業後の僕を含めた同期も道は険しい。
俳優とはやはりそれくらい難しい生き方だ。
自分がいる環境に感謝することを教えて頂いた。

 

3/21~新宿K’sシネマで上映する『スーパーローテーション』は俳優科最後の卒業制作として作られた。
斎藤久志監督は、至極ニュートラルな感覚で物事を捉え、アバンギャルドな感性で映画に現実を注ぎ込む方だ。
何度となく迷い、自我を捨てきれず、未熟過ぎる僕ら俳優科を嘘なく撮って頂いた。
未熟さゆえに捨てきれない俳優自身の“状態”を敢えて作品に持ち込ませ、役との境界を壊していく。
『理屈じゃない。感じろ。ただそこに存在してくれ。』斎藤さんは何度もこう言った。

スーパーローテーション様、僕は“晃太”を生きられたのだろうか?
今でも自問している。

 

卒業後、僕は劇団俳優座の研究生として芝居を一から学び始めた。
俳優座に入って2年、まだまだ作品を生きる難しさを痛感するが、今なら映画学校で頂いた言葉たちの意味がわかる。
映画も舞台も、作品を生きることなしにドラマは生まれない。
たくさんのことが今に繋がった。
そして、『スーパーローテーション』が上映中の3/26~29、僕は舞台に立っている。
是非、両作品とも劇場に足を運んで頂けると幸いです。

 

最後に、斎藤久志監督ならびに『スーパーローテーション』スタッフ・関係者の皆様、映画学校・映画大学関係者の皆様、上映にかかわって下さった皆様、ありがとうございます。
晃太は嬉しいです。
(日本映画大学 俳優科25期生)

 

小泉将臣プロフィール
1986年生まれ。東京都出身。
劇団俳優座研究所所属。
主な出演作 『愛しいイカ』主演:八代亜紀(『しまじろうのわお!』内ドラマ)
CF『アリナミンV&V』、ドラマ『びったれ』、舞台『冒した者』など。
ブログ:http://ameblo.jp/ait-ben-haddou/

 

今後の出演予定
3/21~4/9、新宿K’sシネマ
『スーパーローテーション』
監督・斎藤久志、脚本・加瀬仁美
http://www.ks-cinema.com/movie/open_the_cover/

 

俳優座研究所公演
3/26~3/29
『友達』
演出:眞鍋卓嗣、作:安部公房
http://stage.corich.jp/stage_detail.php?stage_id=63288

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