2005.05.16

Category:学長

「土曜上映会と卒業生たちの秀作」佐藤忠男(映画批評家)

 

日本映画学校では毎年四月から五月にかけて土曜日の午後に公開の講義つきの映画上映会をやっている。毎年テーマをきめて五回ほどやるのだが、昨年は学校の卒業制作の作品である今田哲史監督の「熊笹の遺言」が劇場公開されたのを記念して、この作品がハンセン病の元患者さんたちの生活を描いたものであったことから、これまでの日本の映画やテレビでこの病気を扱った作品の主要なものを集め、元患者の方々も招いて、それらの意義や誤りを検証するシンポジウムを行った。これはたぶん、かつてなかった催しであり、元患者の方々の発言が特に貴重で、大きな成果を得られたと思う。

 

今年は、じつは本校の創立二十年、本校の前身の横浜映画専門学院の創立から数えると三十年という記念すべき年なので、本校の卒業生が監督した作品を集めて特集が組まれた。卒業生の数は非常に多く、すでにベテランや中堅として活躍している人たちが少なくないのだが、今回は比較的新しい人たちに

登場していただいた。

 

四月二十三日の第一回には「チルソクの夏」を上映して佐々部清監督から講義していただいた。佐々部監督は昨年のヒット作「半落ち」が日本アカデミー賞の作品賞に輝くなど、いまや注目のまとの人であるが、その前に作った「チルソクの夏」は助監督時代からなんとか映画にしたいと十年以上も温めつづけてきたシナリオだそうで、これの映画化実現に 至る過程を主に話題にした講義が実に感動的だった。佐々部監督はじつはもう四十代である。映画界の内部では名助監督として知られていたから、ずっと若い頃から、テレビ映画やVシネマでは監督してみないかと声をかけられることはずいぶんあった。

 

しかし、劇場で本格的に公開される映画でデビューしたいと思い定めていた彼は、あくまでそれにこだわって、とうとう機会を掴んだのだという。そのねばりと信念は本当に敬服に値する。そして、「チルソクの夏」はそうしたねばりに真剣な内容の純愛ものであり、地に足のついた爽快な青春映画の秀作である。

 

四月三十日に上映される「千の風にのって」の金秀監督も、おなじように自分の信ずることのできる仕事だけをあくまでねばってやっている人たちのひとりであり、じつにまじめで考えさせられる映画である。卒業生にはエンターティンメントの名手として知られた人も多いが、こういう地道な人と作品ももっと注目されていい。

ページトップへ