2005.10.17

Category:学生

「巨匠と名優のクラッシュ」コウ シイ(撮影・照明コース2年)

 

「東京国際映画祭」のオープニング作品として10月22日に上映された、チャン・イーモウ監督の新作映画「千里走単騎(単騎、千里を走る。)」は、高倉健主演ということで早くも話題を呼んでいます。

 

私は、中国北京の出身です。自分の語学力を活かし、この映画の本編中、約2割を占める日本での撮影パートに、ビジコン係(ビデオモニター係)として参加してきました。

 

日本での撮影パートは、チャン・イーモウ監督の強い要望もあり、高倉健さんの主演映画(「鉄道員」、「ホタル」など)で長年コンビを組んできた日本映画界を代表する降旗康男監督、「八甲田山」をはじめ多くの高倉さんの主演映画を撮り続けてきた木村大作カメラマン、それぞれ所縁のあるベテランスタッフ達が結集し、今の日本映画界最高峰の顔合わせとなりました。

 

作品のタイトル「千里走単騎(単騎、千里を走る。)」は、実は京劇の演目の1つから取っています。「三国志」の中でも、最も感動的なエピソードの1つと言われています。中国の都会では、最近、「お金」や「ビジネス」が重要とされがちで、「人の気持ち」や「親子の絆」といったものが、どんどん薄まりつつあります。だからこそ、監督は、「もっと大切なものを表現したかった」のだと言います。

 

約30年前、ある1本の日本映画が、文化大革命後の1978年、長らく外国映画が上映されることのなかった中国において、歴史的役割を果たすことになりました。高倉健主演映画「君よ、憤怒の河を渉れ」です。この作品は、当時の中国のほぼ全土で公開され、高倉健の名は一躍知れ渡り、今日に至るまで中国で親しまれている日本人の1人です。因みに、私の両親は、高倉健さんの大ファンなんです。

 

この映画を西安の地で熱い思いを胸に見ていた青年がいました。彼の名は、チャン・イーモウ。そして、今から15年前、2人は北京で出会うことになります。それ以来、2人の友情は静かに熱く育まれることになりました。

「いつか高倉さんの映画を撮りたい」というチャン・イーモウ監督の願いを高倉健さんが受け止め、その願いはいつしか2人の夢となったのです。

 

この大作の現場に私がいたのです。巨匠と名優の隣にいました。このような場に立ち会えたこと自体、21歳の私にとっては奇跡的な出来事だと思います。素晴らしい体験ができました。そして、優秀なスタッフさんを見習うこと、これはすごく自分の為になりました。また、頑張れる力になったと思います。

 

最近、日中関係にはいろいろありましたが、もしかしたら、この映画が日本と中国の人たちが、お互いをより理解しあえるきっかけとなるかもしれません。期待していきましょう。

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