2008.02.18

Category:OB

「『自己責任』『自己決定』に気をつけて」御木茂則(キャメラマン)

 

また映画学校を卒業して多くの人達が映画作りの現場に入ってくる季節が近づいてきている。制作会社に入る人もいると思うけど、多くの人はフリーでこの世界に入ってくることになるでしょう。
映画を作る一員としての生き甲斐に燃え懸命に仕事をしていくことだと思います。仕事を覚えてきて責任のある仕事を任されてくると、さらに仕事に対して自尊心と誇りを持って最後にはメインスタッフになれるでしょう。

 

仕事で立場が上になるほど何度となく重要な決断をしなければならない局面が出てくることになりますけど、誰かに相談したときに威勢の良い言葉を並べて焚き付けられて、そこで「自己責任・自己決定」でしなければならないと言われたら、それは危険なことだと思って欲しいです。

 

メディアでは「自己責任・自己決定」の大切さを説いているし、大きな仕事をした人の談話とかでも自分で決断しているように見えます。でも大きな仕事には必ず大きなリスクが伴います。そんな大きなリスクはとても1人では背負えないので、必ず何かしらの形でそのリスクを誰かや何かと分担しています。というよりはすでにそれはシステムの中に組み込まれていると言ったほうが良いかもしれません。

 

フリーのスタッフになるとそれぞれが自分でリスクを分担するシステムを作っていくしかないので、このことを意識してない人はリスクを分散することがしづらかったりします。
今の日本、特に都会は様々な環境が整備されて「1人で生きていてもリスクが伴いにくい社会」になっているので、日常的にはリスクを感じづらくなっていると思います。
でも幾ら環境が整備されてリスクが少なくなっても、分散しにくいことに間違いはないです。そして時間が経ちそのリスクは少しずつ溜ってきて、ストレスになって次第に心を蝕み脅かしていきます。

 

最近映画業界で端から見ていても頑張っている人達が心の病になり、 そしてそんな人達が知らないうちにいなくなっていくことに、人間として大切な何かが消えていっているように感じて私は哀しくなります。
だから「自己責任・自己決定」で仕事をしなければいけないと言われたとき、そういうふうに感じたときは気をつけてください、そして自分が1人じゃないことを忘れないでください。

 

(日本映画学校 映像科2期生)

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