2009.04.14

Category:学生

「卒業は、また始まり。」富岡 英里子(俳優科卒業)

 

卒業制作ドラマ班分け前に行われたある飲み会で、(俳優科講師の)加瀬さんは私にこう言った。
『富岡には、もっと頭じゃなくて感性に従って芝居をして欲しい。』
ズキン ― それは、私が抱き続けていた悩みだった。

 

それから数ヶ月後、私達はオーディションを重ね班分けされ配役された。
卒業ドラマ「犀の角」、あるカルト宗教団体の信者の少女と、町の少年との淡い恋の話。
私が主演の一人・ポーシャ・・・を演じることになった。

 

それから、リハーサルが重ねられるが
―ポーシャが解らない。ポーシャに近づけない。―
頭でっかちな私が、また邪魔をしていた。不安と焦燥に駆られる日々。

 

けれど、現地リハが行われた日に井土紀州監督が下した決断が、私に変わるきっかけをくれた。
『大幅にプラン変更。自分達が役に近づくんじゃなくて、役を自分達に近づけよう。』
―役を自分に・・・自分らしくていいんだ。―

 

なんだかモヤモヤが一気に飛んだ気がした。
それから撮影を重ねていくと、だんだんと体が楽に動くようになった。

 

そして、ついにラストシーンの撮影。井土監督は言った。
「心を開放して。なんか溢れてくる思いがあったら、我慢しないでいいからな。」
――よーい。スタート!!!――――カット!!――オッケー!―

 

その僅かな時間の間は、フーっと気持ちが自然に前に出てきてくれた・・・
卒業制作外部上映会後の飲みで加瀬さんに
「あの時は、加瀬さんが前に言っていた『感性に従って芝居する』意味がほんのちょっとだけど解った気がしました。」
と私が報告すると
『もっと言えば、今度は心だけじゃなくて子宮で芝居できるようになるんだよ。』
そういって優しい目で笑った。

 

終わりのない旅。卒業は、また始まり。
あの時感じた感覚を忘れずに、あの時以上のものを求めて、もっと前進してゆきたい。
2年間ご指導頂いた講師の方々、心からありがとうございました。

 

(日本映画学校 俳優科22期生)

 

>> 日本映画学校 – 2009年4月2日 — 日本映画学校 映像科21期生・俳優科22期生の表彰

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