2012.09.25

Category:OB

「アシュラ」高橋郁子(脚本家)

「アシュラ」高橋郁子(脚本家)

 

カンジーの微笑みが炎に包まれる様は、青いプールによく生えた。

入学して初めての200feet実習のことである。
当初、一緒に組んだY君のアイディアは、
インドの宗教家マハトマ・ガンジーの顔写真をプール上に掲げるというものだった。
それを私が燃やそうとけしかけ、押し切った。
理由はない。計算もない。罰当りなことをしたと今になって思う。

 

カタチの整ったシナリオよりも、まず自分と向き合うこと、

人間を見つめることを重要視してくれた学校の方針のお陰で、
私は少年がリビドーを炸裂させるがごとく、やりたい放題作品に思いをぶつけていた。

 

胎児を受け入れられず悩む妊婦を題材に1000feetで脚本監督をし、

家族という病と命を題材に、100枚シナリオ(10期だけ200枚シナリオではなかったらしい)と、
卒業課題のシナリオを書いた。
技術的にはシナリオと呼ぶには程遠いものだが、エンドマークをつけて作品にし、
厳しい批評に触れることが自分の為になるのだと分かった。

 

アルバイトをしながら、語り(朗読劇)の為の脚本を書き下ろす日々を送っていた2004年。

あるご縁でユニークなお坊さんと知り合った。
聞けば釈迦の物語を朗読劇にしたいのだという。
開祖を崇めるためのものなら書きたくないな、と生意気にも思っていたところ
「人間ブッダを」ということだったので、喜んでお引き受けした。
ちなみに仏教の知識は皆無である。

 

冷静と暴挙を繰り返してきた自身にとって

「あ、これは物書きの神様が『仏教をかじって己を見つめ直せ』と言っているのかも」
と都合よく解釈し、体当たりで挑んだ。

 

『大樹釈尊』は四部作となり、2010年にひとまずの完結を迎えた。

それまでは書きたいものを書きたいように書いていたが、
私はこの時期にプロとしてとても大切な
「与えられた題材に、自分の書きたいものを見いだす」
という心得(技術?)を培ったように思う。

 

テレビアニメのお仕事をいただくようになって数年。

初めて映画のお話が来た。
物語以前のご縁にも驚いたが、原作を読み私は震えた。
ジョージ秋山氏の『アシュラ』は、命の物語なのである。
仏教をモチーフにしているのである。

 

自然を崇め敬うヒンドゥー教の地で生まれた仏教は、大陸と海を渡り、

自然の中に数々の神を見る日本に辿りついた。
その地で生まれたアシュラという映画は、
監督に手を引かれてこの夏、インドの映画祭でも上映された。
冒頭とラストのモノローグはヒンドゥー教にも引き継がれた要素だった為、世界観はすぐに理解して貰えたらしい。
尚、『アシュラ』は宗教映画ではない。
コラムを書くにあたり、自分の中で結びつけたに過ぎないので、どうか誤解なきよう。
映画デビュー作が、あの日の罪の償いに少しでもなれば嬉しい。
(日本映画学校 映像科10期生)

 

『アシュラ』 9/29(土)より公開。

原作:ジョージ秋山、監督:さとうけいいち
出演:野沢雅子、北大路欣也ほか
公式ページ http://asura-movie.com/

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