2014.11.11
Category:学生
2014年9月20日土曜日、日本大学芸術学部にて、日中友好会館主催の特別講義が行われました。
午前にアニメーション映画監督の高畑勲氏による講義と、午後に映画評論家であり本学の学長、佐藤忠男氏による講義が行われ、中国から訪日された北京電影学院と、日本大学芸術学部、東京工芸大学、そして私たち日本映画大学の学生が受講しました。
先に、お二人の講義を受けた後に感じた率直な印象を述べておきます。
高畑氏、佐藤氏共に映画への情熱に満ち溢れており、私はその波にのまれていくような感覚を覚えました。そして言わずもがなの事かもしれませんが、お二人の教養の広さ、深さには大変感銘を受けました。我々受講者に向かって本気で挑み、説明し、答えてくださるのです。
高畑氏の講義のテーマは「現実に裏打ちされた真実を見よう」という事で、『岸辺のふたり』と『クラック!』という二本の短編アニメーション映画を鑑賞した後、高畑氏はまず中国に行った時の思い出と、中国のアニメーション作家、特偉さんを尊敬している事を話され、次に、上映した二本の映画の共通点は何かという話に移りました。高畑氏は話していくうちに段々ヒートアップしていきます。そしてその熱が強くなっていくままに『岸辺のふたり』についての講義が始まりました。高畑氏は次々と我々を試していきます。舞台となっている空間をどこまで把握できるか。人の単純な動きにどのようなニュアンスが込められているか。使われている音楽は何か。はえている木は何か。死生観について等……。
高畑氏の発した、今でもはっきりと思い出せる言葉があります。それは、「感想」という言葉についてです。
「感」も「想」も「おもう」という意味。芸術はそのような「感想」で伝えられるのか?という問いには深く考えさせられるものがありました。
佐藤氏は『東京物語』の鑑賞後、まず小津監督の演出術とその評価が高まっていく軌跡について語られました。
最近気づいた事として、画面構成や人間の型を統一していけば普通は違和感が大きく出るはずなのに出ていないように見えるのは何故かという問題に対して「適切な疲労感」によるものなのではないかと話されました。
小津監督は何度もリテイクを重ねたようで、役者が疲れ果てた時にOKを出す。何故かというと、彼としては本当に役者がくたびれていないと、「普通」の人というものは常に疲労しているものであるというリアリティが出ないからであり、そのリアリティを目指したと考える他ないのではないかという見解でした。この見解には目から鱗でした。
小津映画の解説が一通り終わった後、質疑応答に入りましたが、興味深かったのは北京電影学院の学生からの質問が多かった事でした。
また、成瀬巳喜男監督についての質問が多く、佐藤氏も成瀬について知っている、知ろうとする人が居るのは嬉しいとおっしゃっていました。他にも日本の名監督たちを士農工商に例えると、誰がどの身分の精神を受け継いでいるのかという興味深い話もいくつかありました。
(日本映画大学4年理論コース)