2015.03.17
Category:OB
『アメリカン・スナイパー』を観た。凄い映画だった。
戦争映画なのに、描いているのは一人の男が抱える心の傷と、普遍的な家族の物語だ。
戦争という強大なモチーフはあれど、奇をてらわず、言わばありきたりなストーリーに落とし込んでいる。
それでいて、強烈な反戦映画として突き刺さってくる。心が震えて仕方がなかった。
私がイーストウッドの映画を観て感動するのは、ストーリー展開ではなく、彼の眼差しに、なのだろう。
彼は映画で演説をしない。
声高に主張などしない。
それでもアメリカという国を愛し、憂えている彼の眼差しが、映画を通してはっきりとわかる。
『グラン・トリノ』も『ジャージー・ボーイズ』も、イーストウッドの映画はいつもそうだ。
パターンとも言えるストーリー展開の中に、彼の思想が、哲学が、必ず残されていて、私はそこに震えるのだ。
『つまさき』は2008年に撮った映画だ。
いろいろあって完成したのは2014年だが、映画学校を卒業して初めて作った、いわば自分の原点となる作品だ。
それが今回、幸運にも公開の運びとなった。
配給の生駒隆始さんと初めて会ったとき、聞かれたことがひとつある。
「これから配給宣伝するにあたって、知っておきたい。『つまさき』というタイトルに籠めた、この映画であなたが一番伝えたかったことは何ですか?」と。
とても誠実な問いだった。
答えられなかった。というより、答えたくなかった。
簡単に言葉になどしたくなかった。
伝えたかったこと、語りたかったことは勿論あるが、言葉では語りきれないからこそ映画にしたかった。
そして、その「語りたいこと」よりも、まず先にあったのは、「自分の映画を作りたい」という表現欲求だったから。
自分の映画って何だ。
表現欲求って何だ。
それって単なる自己顕示で、存在表明なのではないだろうか。
だとしたら、すごく恥ずかしいことではないか。
そんな下卑たものを作っていいのだろうか。
『つまさき』は、そんな葛藤の中で撮り始めた。
撮ってみて気付いた。
映画は自分語りではない。
演じるのは自分とは違う俳優だし、現場には自分とは違うスタッフたちがいる。
その中で作られる映画は、どうしたって単なる自分語りにはなり得ない。
ただ、その視点、眼差しは、確実に私自身のものなのだと。
完成した『つまさき』に、何が映っているのか。
言葉にはできない思いがそこにある。映画を観て、感じてもらえたら嬉しい。
イーストウッド先生。あと100年生きても、あなたには届かないかもしれない。それでも、少しでも近づきたいと思う。
(日本映画学校19期生)
脚本・監督作「つまさき」
脚本作「スーパーローテーション」(斎藤久志監督)
脚本作「なにもこわいことはない」(斎藤久志監督)
3月21日より新宿K’s cinemaにて公開。
新宿K’s cinema >> http://www.ks-cinema.com/movie/open_the_cover/
公式サイト >> http://outside.website/new01.html
*イベント情報
《初日舞台挨拶》
3月21日(土)「つまさき」15:00回上映前
【ゲスト(予定)】加瀬仁美監督
《初日舞台挨拶》
3月21日(土)「スーパーローテーション」17:00回上映前
【ゲスト(予定)】斎藤久志監督
《トークショー》
3月29日(日)「つまさき」15:00回上映後
【ゲスト(予定)】下石奈緒美さん(ミュージシャン) 加瀬仁美監督
《トークショー》
3月29日(日)「なにもこわいことはない」17:00回上映後
【ゲスト(予定)】木田紀生さん(脚本家) 斎藤久志監督
《トークショー》
3月29日(日)「スーパーローテーション」19:00回上映後
【ゲスト(予定)】川瀬陽太さん(俳優) 加瀬仁美さん(脚本) 斎藤久志監督
《トークショー》
4月1日(水)「なにもこわいことはない」17:00回上映後
【ゲスト(予定)】廣木隆一さん(監督) 斎藤久志監督
《トークショー》
4月1日(水)「つまさき」19:00回上映後
【ゲスト(予定)】山田キヌヲさん(女優) 加瀬仁美監督
《舞台挨拶&トークショー》
4月4日(土)「スーパーローテーション」17:00回上映後
【ゲスト(予定)】下村響子さん 小泉将臣さん 小宮咲さん 嶋田康平さん 中村圭吾さん 斎藤久志監督
《舞台挨拶&トークショー》
4月5日(日)「つまさき」17:00回上映後
【ゲスト(予定)】河野桜さん 松井美波さん 常川藍里さん クノ真季子さん 加瀬仁美監督