2006.03.06

Category:OB

「北京の映画祭にいってきた」宇賀神光佑(アニメーション技術スタッフ)

 

卒業制作「月から落ちてきたうさぎ」が北京電影学院国際学生映画祭に招待され、昨年北京に行ってきました。                  
その頃のメディアでは小泉首相の靖国参拝をきっかけにした中国の反日運動が頻繁にとりあげられていて、中国人に踏みつけられた小泉首相の写真や、燃え上がる日章旗の映像がよく目に付く緊張したムードで、中国行きの飛行機の中で私はかなりビビってました。
映画祭の会場、電影学院にたどりつくと、世界各国から学生が集まりとても国際的な雰囲気です。初日は校内のレストランで歓迎レセプションが開催されましたが、場内は外国からの参加者で溢れかえっており、流れるままに座った席が全員中国人のテーブルだったのです。「うわっ!失敗した」と飛行機の中で考えていた反日運動が頭の中をよぎり、パニック状態にに陥ったのですが、逆に「こうなったら絶対中国人の友達をつくろう!」と思考回路を軌道修整しました。メモ帳に宇賀神光佑と自分の名前を書き、カタコト英語で「ネ、ネ、俺日本人なんだけれども俺の名前、中国語で何て読むの?」と大きな声でいったら、クスクス笑われちょっと面白がってくれました。

 

光佑はクァンヨウ・・・だそうです。会話は、北京の標準語と広東語でまったく通じないから英語で話してもらい私もようやく話に加わることができました。話をしてみると、どうやら皆反日ではなかったようなので緊張が和らぎ、メディアによる洗脳がここでようやく溶けたのです。

 

翌日、日本人留学生に出会い、いろいろ聞いたのですが、そこまでエブリバディ反日というわけではないそうです。でも新しい部屋を日本人だからという理由で借りにくかったり、常連として通っていた電気屋のおじさんが急に冷たくなったとか、生活していると肌で感じることもあるようです。一方、反日デモ行進が起こったときに学院内では「日本人を守れ!」という大げさな集会があり、恥ずかしくて出席できなかったと、その留学生は言ってました。

 

映画祭は海外からの作品、中国国内の作品も含めて、100本以上になり、約一週間かけてぶっ通しで見ることになります。ここで面白かったのが中国人の観客の反応。映画に感銘を受けたり、逆にどうしようもない映画に皮肉をこめるときに「ハオ!ハオ!(多分いいぞ!みたいな感じ)」と上映中叫び続けるので結構不気味なものがあります。私の作品は叫ばれることはありませんでしたが、おとぎ話のような分かりやすい話なので、たくさんの感想をいただくことができました。(「カワイイ」と日本語を使ってくれる人もいた)  9日間で中国人学生の親友ができました。名前は『シダ』・・・(漢字変換できません)監督科の4年生で23歳の男性です。舞台挨拶で英語の通訳を担当する国際派で、じつは卒業論文のテーマに北野武映画を選ぶほどの邦画オタクで、三池崇史監督の作品「中国の鳥人」が撮影された雲南省の昆明出身です。故郷の写真を見せてもらうと、そこにはウルルン滞在記ばりの秘境で少数民族がたくさん写っていました。そして懇願してこの秘境を三月に旅行することになり現在中国語の特訓中で、にわか中国フリークです。

 

彼には北京市内を案内してもらったり、万里の長城に連れて行ってもらったり、とてもお世話になりました。私より詳しい日本映画の話で盛り上がり、「政治的にひどいニュースばかりだからこんな風に中国の人と話せるとは思わなかったよ」と、そのような感じの英語を話すと「そうかそうか」と穏やかな顔でうなづいていました。結局、自分の中で日中関係の実態はつかめずも、「こわーい日本人嫌いの中国人に出会ったら逃げればいいし、それまで楽しもう。何もわからないまま怯えて近寄らないのはせっかくの交流がもったいない」そう思うことにしました。ウルルン滞在記ばりの中国再訪問が待ち遠しい今日このごろです。

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