2006.05.08

Category:OB

「地方でつくり続けるということ」江口隼人(俳優)

 

黄色い風が吹き荒れて、博多の町は、短い春を終えて初夏の匂いが漂いはじめました。

 

このコラムを書くにあたり振り返ってみると、もう僕が博多に返ってきてから7年の歳月が流れていることに改めて気付きます。皆さんお久しぶりです。江口隼人はふるさと福岡で元気に「俳優として」生きています。
帰郷してすぐに、僕は久留米という町の小さなFM局で、月~金5時間の昼ワイド番組を担当しました。その時に番組で出会った、久留米在住の劇作家・石山浩一郎氏(「神露渕村夜叉伝」)とともに「そこいらにいた若者たち」を集めて「劇団第三法廷」を旗揚げしたのが5年前。一昨年の暮れに第三法廷を解散、第三法廷の若手作家FALCONを中心に「劇団空中楼閣」を結成し、今はそこが僕の「モノヅクリ」の基盤です。

 

昨年、9月には、漫画家・立原あゆみ(「本気(マジ)」「弱虫(チンピラ)」)さんの原作許可をいただき、旗揚げ作品「リストラ大王」の上演にこぎつけ、地元小劇団の旗揚げとしては異例の大幅な黒字公演となりました。
福岡でも珍しい「円形の上演エリア」をもつアクロス福岡での上演には、もちろん卒公での青山円形劇場の経験が、より多くのヒントをくれました。

 

そして、現在。
空中楼閣が挑戦しているのが、よもや映画学校のお家芸でもある「素劇」の公演。
僕は、在学中に二度、藤田 傳さん演出の素劇を体験しましたが、今回、空中楼閣が挑むのは「素劇で演じる古典落語」です。まだ演目の模索や実験的な創作稽古に四苦八苦していますが、「頭山」「胴斬り」あたりの「ナンセンスなSF要素のある演目」を、どうにかこうにかテンポや雰囲気を崩さずに肉体で表現しようという挑戦です。

 

もちろん福岡のお客さんにとっても、そして役者たちにとっても見たことのない遊び。数十年も小劇場演劇が遅れている福岡でいったいどれほどのインパクトを残せるのか、福岡に芽吹きはじめた「今村イズムの種」たちの体当たりの日々が続いています。

 

怠け者の集まりなのに、そのくせ余計に個性がクラッシュしていた11期俳優科。

 

その中でも、どちらかといえば頭が固く、あまり面白い人間ではなかった「おちこぼれ」の僕が、今もこうして板の上に立っている事を、時々、ふっと不思議に思うこともあります。でも「中央には中央、地方には地方」の芝居があるように僕には僕のスタイルがあるはずだと今も模索しています。

 

もし、色々な理由で九州に戻っている卒業生・在校生がいましたら、是非、「空中楼閣の劇場」「空中楼閣の稽古場」を訪ねてみてください。各々の体に染み付いた「人間のにおい」を必死でかぎ分けながら、げらげら笑って芝居を作っている「面白い連中」がいますから。
『劇団空中楼閣』 http://www.kuchurokaku.com

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