2006.07.17

Category:OB

「天まであがれるか? ……これからです。」本田光(シナリオライター)

 

先日、映画『天まであがれ!!』が静岡県浜松市で単館公開されました。
これは僕のオリジナル脚本にして、映画デビュー作となった作品です。
最初にこの作品の完パケを試写室で観た時。書いているあいだの数ヶ月、ずっと自分の頭の中にしかいなかった登場人物たちが、監督はじめ大勢のスタッフや役者さんたちによって命が吹き込まれ、立って、歩いて、泣いて、笑って、していることに、何ともいえない嬉しい気持ちになりました。いろんな反省点ももちろんあるのですが、それをおいても、ああ、この日のことを自分はずっと忘れないだろうな、と思えるほど特別な気分でした。

 

そもそも幸運にもこの仕事が出来たきっかけは、恩師加藤正人先生のおかげでした。加藤先生が、卒業生のために月一で勉強会を開いてくださっていて、そこに出席していた卒業生三人(僕を含めた)に「ちょっと急ぎの仕事だけど君たち分担で書いてみますか? 僕が監修するから」と、ドラマデビューのお力添えもしてくださったのです。そこで、そのドラマ『スターライト』を撮った横山一洋監督と知り合い、監督が「今度、映画撮るから一緒にやりませんか?」と声をかけてくれたのです。

 

「天まであがれ!! の公開に際して、ホームページやプログラムに、あなたのプロフィールを載せたいから原稿を送って欲しい」と、制作サイドから言われたときは困りました。何しろ『スターライト』以外、何にも実績がないわけです。ないはないなりに、大阪出身であるとか、会社勤めをしていたけれども30歳のときに辞めて映画学校に入って脚本ゼミを卒業したとか、自分なりに自分のことを知ってもらうための原稿を書いて送ったのですが……。
「そういうのはどうでも良い。」と、言われました。プロフィールというのはあくまでも実績みたいなもの……作品名とか、それもなるべく誰でも知っているものが書かれているのが望ましい。並びで載っている他のスタッフのところもみんなそうなってるんだから、と。……なるほど。
それで結局、出来上がったプロフィールは、加藤先生のお名前をお借りしたりして、いろいろ作品名が書いてあるけれど、『スターライト』以外、自分で書いたものはなく、要約すると僕がやったことは「打ち上げの席で横山監督と意気投合した」ということのみ、というものでした。
しかし、考えてみると自分で言うのもなんですが、このやったことと言えば、呑んだ席で仲良くなった、ということだけっていうのは、なんとも自分らしいというか、いかにも自分のプロフィールであることだなぁ、と思えるのです。自慢にはなりませんが……。
プロフィールの原稿のやりとりで、誰かお師匠さんはいないのですか? と、聞かれましたが、最初に呑みに行ったことがきっかけでゲームの会社を紹介してくださった宮下隼一先生をはじめとして、亡くなった杉村先生や沢山の緒先輩方にお世話になり、今にいたっています。皆様、あいつは別に弟子じゃないよ、とおっしゃるでしょうが、本当に沢山の方々にお世話になったのです。ここじゃ書ききれないくらい。
「半年前に書いた作品のポスターをバイト先の居酒屋に貼ってもらって、嬉しそうにその前で写真に写ってる場合じゃないだろう、お前。」という、その方たちの声が聞こえるようです。
はい。がんばります。これからです。

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