2007.05.14

Category:OB

「横浜と新百合ヶ丘」七字 幸久(映画監督)

 

22年前、横浜は夢のように楽しい街だった。
横浜だよ。神奈川県だよ。都会なのに海まである。観光名所は数知れず、とにかく遊ぶところは山ほどある。その上「横浜放送映画専門学院」に入学してひとり暮らしの友達も出来た。親元を離れ、開放感に浮かれた男たちが、自堕落な生活に堕ちるまでに全く時間がかからなかったのは言うまでもない。朝まで遊んでいるから昼は寝ていた。もちろん、学校にはほとんど行かなかった。週休四日。それが私の横浜時代。瞬く間に1年が過ぎて、新百合ヶ丘の新校舎が完成し、夢の横浜生活は終止符を打った。

 

21年前、新百合ヶ丘は悪夢のように何もない街だった。
しかし、今度は小田急線! 小田急線と言えば下北沢がある。あこがれの下北沢。東京だよ。世田谷区だよ。新宿だって渋谷だってすぐ近くだ。浮かれた男の足は必然的に学校から遠のいたのは言うまでもない。おまけに20歳になったから大っぴらに酒も飲める。タバコも吸える。開放感はピークに達し、週休5日制の学校生活。実習以外に学校に行った記憶はほとんどない。

 

気づくと2年目もあっという間に終わりに近づいていた。
「あれ?卒業?俺、何も学んでないんじゃない?」と感じてはいたけれど、時すでに遅し。浮かれた自由を満喫した男が、映画製作の現場に行って通用するわけがないのは、今思えば当然のことだった。
そんなわけで映画の製作現場で学んだことは数知れない。怒られ、なじられ、時には褒められて、どうにか監督になることが出来たのは良き先輩や同僚や後輩に恵まれて、多くの現場を体験できたからとも言える。
誤解しないでね。「学校に行かなくても監督になれるよ」と言っているのではない。人それぞれ違ったやり方があるのは当然で、真面目に学校に通って監督になった人は大勢いるのですから。

 

バカばっかりしてロクに学校に行かなかった「横浜時代」と「新百合ヶ丘時代」の2年間で、自分が確実に何かを学んでいることに気づいたのは最近のことだ。どうやらそれが今の自分を作っているらしい。
ならばいっそのこと、このバカな自分自身を主人公にしてみよう。「俺もそうだった」と共感する人もいるに違いない。2007年5月12日公開の映画「歌謡曲だよ、人生は」の一編「これが青春だ」は、そんな想いで撮った作品だ。ちなみに撮影を担当したのは、同期生だった池内義浩さん。彼は真面目に学校に通ってカメラマンになった人だ。
いろいろな人がいるから人間は面白い。これからもそんな人間たちを描ける監督になりたいものである。

 

おしらせ 《1》

 

「歌謡曲だよ、人生は」~公開記念イベント~

 

“火曜日は『銀座』歌謡デー” シネスイッチ銀座 10:10の回上映後ゲストのライブ とトークショー
5/15(火) ゲスト:伊藤咲子「乙女のワルツ」熱唱!
5/22(火) ゲスト:園 まり「逢いたくて逢いたくて」熱唱!
5/29(火) ゲスト:北原ミレイ「ざんげの値打ちもない」熱唱!
6/ 5(火) ゲスト:高田恭子「みんな夢の中」熱唱!

 

“木曜日は『新宿』歌謡デー” シネマスクエアとうきゅう 10:30の回上映後ゲストのライブ とトークショー 
5/17(木) ゲスト:園 まり「逢いたくて逢いたくて」熱唱!
5/24(木) ゲスト:ロス・プリモス(5人勢揃い)「ラブユー東京」熱唱!
5/31(木) ゲスト:守屋浩「僕は泣いちっち」熱唱!
6/ 7(木) ゲスト:未定  
詳しくは、『歌謡曲だよ、人生は』 http://www.kayomusic.jp

 

※出演者は予告なく変更となる場合がございますので、事前に劇場へお問い合わせ下さい。
(シネスイッチ銀座  03-3561-0707) (シネマスクエアとうきゅう 03-3202-1189)

 

おしらせ 《2》

 

『探偵事務所5』 
第04番 「人工知能探偵はプログラマーの夢を見るか?」(七字幸久監督)
現在配信中 ⇒ http://www.tantei5.com/

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