2007.06.18

Category:講師

「学生映画の傑作をごらんいただきます」佐藤 忠男(映画評論家)

 

今年8月の上旬、福岡市の市立総合図書館の映像ホール http://www.cinela.com/ で、日本映画学校の学生作品22本の連続上映が行われることになった。
日本映画学校の学生が学校の実習で作る映画には、しばしば劇場で有料公開されたり、東京国際女性映画祭
やアジアフォーカス福岡映画祭など、各地の一般の映画祭の番組に組み込まれて上映された作品がある。なかには、
評判になって全国百ヶ所以上の会場で自主上映された作品も何本かある。
去年日本映画の各種の賞を総なめにした「フラガール」の李相日監督が7年前に卒業制作の作品として学校に
残していった「青~chong~」や、同じ年の作品で文化庁の選ぶ年間優秀映画10本の1本に選ばれた
「あんにょんキムチ」とか、東京のアート系映画専門の映画館ユーロスペースで一日5回5週間のロードショー
に成功したうえにさらに一週間モーニング・ショーのおまけまでついて全国各地で上映された「ファザーレス/
父なき時代」、引きこもりという深刻な社会問題を扱っていることがマスコミに報じられたこともあって
広く自主上映された「home」などが一般によく知られた作品であるが、他にもこれらに劣らぬすぐれた作品は
少なからずある。
これらの作品を福岡での上映の機会に見ていた市立総合図書館の映像部門の担当者が、他にもいい作品が
あるのではないですか、と聞いて下さったことから急速に計画が進んだ。あるある、たくさんある。福岡総合
図書館の映像ホールは、ふだん所蔵している日本映画の古典やアジア映画の名作を上映しているところで
観客の目は肥えているから、いい加減な作品は上映できないのだが、それでも決して恥ずかしがることなく
ごらんに入れることのできる作品を20本はそろえることが可能である。校長としてというより、映画批評家
として、「日本映画史」全4冊を書いた映画史家として、私は臆することなくそう言うことができる。
もちろん学生の作品だから一見して簡素である。派手な娯楽性や高度の技巧をこらした洗練性を求める
人にはもの足りないかもしれない。しかしこんど上映される作品にはいずれも、若者でなければ見出せない、
今の青年たちでなければ表現できない貴重なものが含まれている。私はそう思っているし、前述した作品は
いずれも、そういう理由で一般の観客にも認めていただけたのである。それが22本もある。期待してほしい。

 

 

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