2008.12.30

Category:OB

「すべての縁は、チャンスに変わる」高橋郁子(脚本家)

 

それでさ、その学校の卒業生に、売れっ子の脚本家って何人いるの?」
ある現場で、シナリオの書き方に拘っていた際に、局のプロデューサーから投げかけられた言葉だ。私は何も言えなかった。
その後、プロデューサーは、実写で活躍する脚本家の名前を挙げ、現実的な脚本への取り組み方を教えてくれた。そして、私は気付いたのだった。

 

映画学校で主に教えるシナリオとは、あくまでも美学である。
これが私の現時点での結論だ。

 

実際の打ち合わせの場では「製作サイドの要求を取り入れつつ、譲れない所は残す」というスキルが求められる。
……と、批判めいたことから書き始めてしまったが、それでも映画学校に入らなければ、現在の私はなかったと思っている。
在学した3年間は、まぎれもなく私の原点である。

 

・表現の道に、王道はない。
・人との繋がりを大事にせよ。
・死ぬまで人間研究。
・技術は後からついてくる。まずは、何を描くかだ。
・頭がカチ割れるまで考えろ。

 

上記は在学中に講師から聞いた、今も忘れることのない言葉たちだ。
ものづくりの現場で必要な嗅覚を、養ったように思う。

 

私はコンクールに作品を応募したことが1度もない(学内は除く)。
卒業後、誰かに師事したこともない。

 

時折、不思議に思った後輩や同期生から、なぜプロになれたのかと質問されることがある。
「人の繋がりを大切にしてきた」それに尽きる。
簡単に経緯を書いてみる。

 

録音スタジオの制作デスク、販売員や派遣等、職を転々としながら朗読劇を書いていた。それが人の目に留まり、新しい仕事(舞台作品)を生んだ。紹介してくれた方の顔を潰すことのないよう、常に全力を尽くした。
即効性はなくとも、いつか何か仕事に繋がるかもしれないと思い、宣伝にも力を入れた。
そんな中、ある作品がアニメ監督の目に留まり、『モノノ怪』というオリジナルアニメで、テレビデビューすることが決まった。業界のことも、アニメ脚本のことも知らない私を、現場に引っ張り上げてくださったことは、感謝してもしきれない。

 

それから先はテレビも舞台も、作品が次の仕事を呼び、新しい出会いがまた仕事を呼び、今に至る。そして、今までドロドロしたものしか書けないと思いこんでいた私に、コメディ作品を振るという方まで現れた。
人との繋がりは、自分の引き出しをも増やしてくれるのである。

 

これからもジャンルに囚われることなく、様々なことに挑戦していきたいと思う。

 

・人を見つめる。
・人を描く。
・人の意見に耳を傾ける。
・人との繋がりを大切にする。

 

最初から最後まで、「人」である。映画学校で学んだ志だ。

 

(日本映画学校 映像科10期生)

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