2009.11.24

Category:OB

「≒私/映画」 羽生敏博(映画監督/助監督・録音・出演)

 

映画館の椅子に座って、スクリーンに映し出される世界を見つめている私は、そこにいるがそこにはいない。

たしかに椅子に座っているのだが、遥か彼方の別世界に連れ去られ、「あちらの世界」の住人として生きている。
突然トイレに立ちたくなった私は、もぞもぞしながら「こちらの世界」に戻ってくる。廊下に出ると、かすかに映画の音が漏れ聴こえてくる。

 

私は現実世界にいることを、身体から放たれる生暖かい温度によって自覚しているのだが、心は「あちらの世界」を気にしている。

この数分の間に、スクリーンの中では数ヶ月、数年が経過し、とんでもない事件が起こり、世界が一変しているかもしれないと創造する。
いっそ映画館を出てしまえば、私は否応なく「こちらの世界」に戻るしかない。

 

しかし、映画館のトイレにいる私は、この2つの時間の奇妙な中間地帯にいて、夢から醒めきれずに「あちらの世界」に拘束されている。

そして、映画館を出た私の前に広がる世界は、いつも少しだけ何かが変化している。

 

「映画」と呼べる、自分でそう呼びたいだけの作品を数本撮った。

「えいが」と僕は繰り返し自分の声でつぶやく。
そう、自分の声だ。
自分の声でつぶやかなければいけないと思った。

 

卒業して7年経ったが、その曖昧さに耐えていられただろうか。

本当のことはもう分からない。
しょうがない。ただ、私は虜なのだ。みなさんもそうなんだと思います。

 

これから、また始まります。

(日本映画学校 映像科15期生)

 

『ロト』/『MUGEN』 甲斐田祐輔監督

11/21より池袋シネマ・ロサにて1週間限定レイトショー
助監督・録音・出演
http://www.kathmandu3.com/lotmugen/

 

監督作品『AMAYADORI/M/W』がヨコハマ国際映像際2009 CREAMにて上映中(11/29まで)

http://www.bankart1929.com/

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