2011.03.01

Category:OB

「原点」高橋郁子(脚本家)

 

3月5日(土)~11日(金)まで、バルト9他、全国8か所の劇場でアニメ『おぢいさんのランプ』(原作:新美南吉、監督:滝口禎一)が、オムニバス上映されます。
文化庁の若手アニメーター育成プロジェクトとして作られた作品ですが習作ではありません。4社のいずれも、観客(視聴者)を前提とした作品になっています。
テレコム・アニメーションフィルムさん制作の『おぢいさんのランプ』は、大人も楽しめる1本です。皆さま、ぜひ足をお運びください。


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卒業し13年、今までのことを振り返ると感慨深いものがある。
父に入学を反対され、泣きながら説得したこと。
1年生の時、人の評価を気にしすぎて、担任の橋本信一先生に「それを聞いてどうするのか」「最大公約数にはなるな」と言われたこと。
2年生の時、1000feet実習で脚本の直しの段階で生まれて初めて胃痛を味わったこと。
その夏の100枚シナリオが、学内コンクールで佳作に選ばれたものの、某大御所脚本家に「描きたい内容の意図はわかるが、技術が充分でないため、つたわってこない」と総評でバッサリ斬られたこと。
悔しい思い出ばかりのように感じられるかもしれない。
しかし全て、未熟な者に対する真っ当な愛情である。
厳しくも温かい視線に育てられて、今の私がいるのだ。

 

とはいえ、不真面目な学生だった私がなぜ脚本家になれたのか――。
もう少し思い出話にお付き合いいただきたい。
それは前出の1000feet実習での経験が大きく作用している。
脚本の直し作業である。
何度書き直しても「分からない」「(話が)落ちてない」と言われ、どのように直せば良いのか質問すると
「それを言ったらお前の作品じゃなくなる。自分で考えろ」と突き放される。
撮影までに時間もない為、家に帰らずファミレスでウンウン唸っていた。
精度はどうあれ、人生初の「死に物狂いの執筆」である。鬼のような指導講師に殺意すら覚えた。しかし実行しなくて本当に良かった。
あの当時理不尽にも思える苦しい経験が、今とても役に立っているのだ。あれがなかったら、早々に現場から脱落しているだろう。
プロとしての種を植え付けてくれた当時の指導講師、栃原廣昭さんと、その環境を作ってくれた映画学校に、この場を借りてお礼を言いたい。

 

ありがとうございました。
種はようやく発芽しました。開花まで気長に待っていただけたら幸いです。

 

(日本映画学校 映像科10期生)

 

『おぢいさんのランプ』
http://www.telecom-anime.com/odiisan/

シナリオ作家協会会員プロフィール
http://www.j-writersguild.org/portal/profile.php?id=635

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