2012.06.12

Category:学生

「シャンプーボトルからタイタニックまで」宮滝翼(日本映画大学2年)

 

初めて母親の涙を見たのは映画館だった。
観ていた作品は『タイタニック』。
僕は困惑し、一生懸命にスクリーンへ目をやった。
ソファに横たわるケイト・ウィンスレット。
ドクン・・・ドクン・・・
あの時感じた大きな鼓動はどちらに反応したものだったのだろうか。

 

あれから15年。
2年目の一人暮らし。
週一回のコインランドリー。
週二回の入浴。
週三回のカップヌードル。
だんだんと生活に規則性が生まれ平坦になってくる。
ぐるぐるぐるぐる。
同じ方向、同じスピードで進む日常。
しかし、映画がそれを阻む。

 

今でも映画を観ると胸が高鳴る。
いや、観る前から高鳴っている。
映画が日常に印をつけてくれる。
それは、反復不能、唯一無二、絶対固有の経験を意味する。
そして、そんな経験ができる映画作りに僕も携われたら、と思う。
そう、『タイタニック』のような。
日本版『タイタニック』を作りたい。
ジェームズ、今度は僕の番だ。
母さん、もう少し待ってて欲しい。
ケイト、次はお祖母さん役でいこう。
ん?
待てよ。タイタニックということは先に史実が必要なのか。
まずは船か・・・
というわけで僕は日本の造船業を積極的に応援していくつもりだ。

 

空になったシャンプーボトルを湯船に浮かべてそんな風に考えた。

 

(日本映画大学映画学部1期生)

ページトップへ