2012.08.07

Category:OB

「ドキュメンタリーは万物に宿る」 若木康輔(ライター)

 

今春、編集メンバーになっているドキュメンタリーカルチャーマガジン「neoneo」のウェブサイト・オープンに合わせて、本コラムに書かせて頂きました。

 

コラムの件で約十数年振りに新ゆりの校舎に伺い、僕が学生の時からいらっしゃった職員の方が変わらずお元気だったこと、感慨しきりでした! 愛校精神が今頃になって少し芽生えてしまいました。「現場で学校が新ゆりだとバレたら、某Nかつ芸術学院出身者にいじめられる」 そんな噂に在校中に怯えて以来、自分から人に言わないのがすっかりクセみたいになっていたのですが。そもそも、あのまことしやかな噂は本当だったんですかネ?

 

また書いてもいい、とチラッと言ってもらったので、すかさず乗っかります。「neoneo」では現在、motion galleryさんというプラットフォームを通じて、クラウドファンディングの運営資金のご支援ご協力をお願いしております。
http://motion-gallery.net/projects/neoneo

 

どういうシステムかひらたく言いますと、ウェブ上の寄付のおねがいです。まだまだ馴染みのないやり方ですので、単なるカンパではなく、こちらが用意いたします特典の先買いチケットでもある点などの認知に、かなり苦戦しているのが正直なところですが……。1円たりともおろそかにせず運営資金に充てていきます。若い方にも負担の少ないよう、チケットは500円から設定しております! よろしくお願いいたします。

 

では、「neoneo」とは? ドキュメンタリーを総合的にあつかう国内初のメディア。ドキュメンタリーをジャンルではなく方法論と定義し、映画、テレビに限らず、アート、演劇、広告、書籍などを横断的に捉えていく。
こうしたテーゼのもとに、我々は始めております。サイトがオープンして3ヶ月、“映画がやはり中心。でも、映画だけがドキュメンタリーじゃない”、そう提示したい感じはだいぶ出てきたのではないかと思っています。

 

「記事を読んだので」と言ってくださる情報提供や問い合わせを、ようやくコンスタントに頂けるようになってきました。ありがたいです。また、紙による同名雑誌も、創刊号を8月に発行いたします。「neoneo」がなにをやりたい集まりなのかは、創刊号でより鮮明になるでしょう。こちらの情報も随時アナウンスいたしますので、ぜひ一度、ご覧ください。http://webneo.org/

 

それにしても、シャープな理論派揃いのメンバーのなか、マチバの処世感覚のみの僕が一体、どんなリアリティに拠って「ジャンル越境」の考え方をすぐに呑みこめたのか。
どうも理由は単純で、実家の商売が玩具店だから、に尽きるようです。

 

写真は、数年前に撮った実家の店内に、自分の顔を貼りつけたものです。
ゴチャゴチャした店のようすを、ご覧ください。ゴジラとキティちゃんが一緒に吊り下げられ、背中を向けたアンパンマンと自転車(これも売り物)、けん玉とラジコンが並ぶ。これでも店内でいちばん整頓されているエリアです。逆サイドは駄菓子とプラモデルと文房具コーナー。これで夏になればお盆の提灯を売り、市議会選挙が始まればダルマを売りますからね。導線はメチャクチャ。昨今のセレクトショップとは価値観が真逆です。

 

この、カテゴリーなる概念が完全に意識の外にある両親の無頓着振り、「おまえはただのおもちゃにすぎない」と言わんばかりのドライさが、僕の精神的インフラになっています。でもそういう、演出もコンセプトもゼロの店にしかない天然の味って、ありますでしょ?
「neoneo」でも無頓着がかりとして、あまり教条的に考え込まず「おもしろいものはなんでもドキュメンタリー的、だってことに等価にしてしまおう!」ぐらいの気持ちで関わろうと思っています。
そう、ドキュメンタリーは万物に宿る。これが言いたかったんです。

(日本映画学校 映像科2期生)

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