2017|30min|ドラマ
誰かの役に立ちたいと介護士になった理沙(23)は、四肢麻痺の障害を持つ裕太(30)と出会う。裕太は過去の辛い体験が原因で自室に引きこもり、ひとり油絵を描く日々が続いていた。なんとか彼の心を開こうと努力する理沙。無理難題を押し付けては彼女を困らせる裕太。しかし1枚の絵と理沙の説得が、しだいに裕太を変えていく。トラウマを告白し新たな一歩を踏み出す裕太を前に、理沙は決して越えてはならない一線を越えた。
新人介護士の高橋理沙(23)は、首から下の感覚を失った四肢麻痺の障害をもつ佐藤裕太(30)を担当することになった。献身的に振るまう理沙に裕太は心を開かず、辛辣に接する。一方で、裕太は自室に引きこもり、口にくわえた絵筆でキャンパスに向かい静物画を描き続けていた。二人で過ごす日々、やがて裕太は理沙に心を奪われていく。同時に、理沙のなかにもある感情が芽生えはじめていた。自らが抱える想いは介護士としての気持ちなのか、裕太への気持ちなのか? 答えが出せぬまま、苦しむ理沙はある行動を取ってしまう……。
本作「キャンバスの景色」は、スタッフたちにとって等身大の20代の女性を主人公としている。理沙の感情をどう表現するか。監督の三宅辰典は、そのことに苦心しながら演出プランを練り、映画に「恋愛」の要素を取り入れようとした。しかし、障害をどう描くかに重点をおいた脚本家の李向と衝突し、脚本の直しは難航を極めた。また、俳優、スタッフたちも登場人物たちの感情の流れを理解し、形にすることと苦闘しながら撮影を続けていった。さらに、大掛かりなセット撮影や雨降らしのシーンなど、数々の困難を乗り越えて本作は完成した。
一般公開に先立って行われた学内上映では、多様な解釈を生む衝撃的なシーンの存在が物議を醸し、長時間にわたる白熱した論議を巻き起こした。本作は、女と男の哀切と、揺れ動く心の機微を大胆に描き出した人間ドラマである。
秋月三佳
本庄司
菊地由希子
花岡翔太
秋場千鶴子
日野順子
麩澤孝
監督:三宅辰典
脚本:李向
プロデューサー:川崎徹
制作:陳小瑜、王璐
撮影:山田弘樹
照明:喜納祐樹
録音:田邊萌乃
編集:福地楓
助監督:黒下省吾、田嶋希望、梅崎誠仁
撮影助手:重富美空、佐藤望、大塚しおり
照明助手:加藤大樹
録音助手:恵福幸栄、相原宏次、相原智久、高澤奏、好本達郎
編集助手:山本甲斐、松原優季菜、黒下省吾
編集助手/記録:麥谷真穂
音楽:きだしゅんすけ
音楽エンジニア:加藤侑作
クラリネット:広瀬汀
録音スタジオ:abRiR studio
車両:柴田啓佑、川﨑龍太
車両応援:手島昭一、清水健司、芦澤浩明
キャスト協力:株式会社ボックスコーポレーション、株式会社オフィスマイティー、俳優倶楽部サイアン、株式会社スーパーエキセントリックシアター、アークエムプロモーション、劇団わが町
制作応援:奈良田航平、金丸紘平、岡本彗夢
撮影照明応援:安藤昇児、石原芽紅、茅嶋直大、杉村千妃路、三野進紀、山上俊成、佐藤楽、大河戸悠香、内山遼省、田中雅由、西川瑛人、宿谷謙太郎、三輪橋翔、堀口悠
ロケーション協力:有限会社井山ゴルフ、株式会社若武者ケア港南台事業所、透視療法気栁、東京都立狭山公園、東京都立府中の森公園、府中不動産株式会社、佐伯コーポラス、橋華楼、ハートショップ株式会社
特機協力:株式会社NKL
照明機材協力:株式会社アペックス
美術協力:株式会社日映装飾美術、株式会社柴水園、油絵サークル・モーブの会、千葉県立松戸高等学校 芸術科11期生、相原未佳、北川瑠衣、児玉裕司、高澤智代、高澤康行、谷川潤、高野保、高野祐輔、仲山貴康、松田宥人、村田魁斗、山田みほ、渡邊玲、工藤歩美香、須山あゆみ、飯塚楓、菅原宏展、中島玲香、野澤玄
車両協力:株式会社トヨタレンタリース 神奈川新百合ヶ丘店、株式会社アクティオ
協力:社会福祉法人白山福祉社会特別養護老人ホーム ラスール麻生、有限会社パムック、アビリティーズ・ケアネット株式会社、松本誠一
取材協力:古小路浩典、麩澤孝、佐藤紀喜、株式会社若武者ケア、ケアパートナー優心、栗林福祉事業所、麻生ケアセンターそよ風、口と足で描く芸術家協会、脊椎損傷者友の会、特定非営利活動法人ノアール、国立障害者リハビリテーションセンター
エキストラ協力:阿部翼、王佳、工藤寛汰、島沢裕美子、関口美菜子、関口流輝、高橋美希、東海林峻乃介、田嶋敦、田嶋新、冨田智、中村政道、細谷和樹、山井あきら、吉田久美子
グレーディングアドバイザー:倉森武、山口登
現像:株式会社IMAGICA
協賛:KODAK
この映画は「四肢麻痺」という首から下が動かせない身体障害を題材にしています。私と脚本家の李向は、同じ障害を持つ方たちへの取材を重ねながら、シナリオを書き直していきました。実際にお会いして話をしてみると、私たちと障害を抱えているということ以外、何も変わらないなというのが、第一印象でした。もちろん、彼らが私たちに対して何も気負わせないように、フランクな姿勢で接するようになるまで多くの苦労を抱え、乗り越えて来られたのだと思います。けれど、お会いした時は、こちらに変な気遣いをさせないように、むしろ私たちを気遣ってくださいました。ですから、裕太という登場人物を、障害を持っていることに悩んでいる人間としてではなく、誰しもが抱える人間関係の悩みで揺れ動くひとりの人物として描くことにしました。
映画の世界観を作るうえで取材を重ねましたが、私が最も苦心を重ねたのが主人公である新人介護士の理沙の気持ちでした。理沙は劇中で大きな間違いを犯してしまいます。その大きな間違いをするまでにどのような人物として、彼女の感情を作り上げるべきかが何より大切でした。脚本家の李向、キャストの秋月三佳とは何度も話しをし、その答え模索していきました。理沙は裕太をどう思っていたのか?どうして彼女は、あのような行動に至ったのか。決してわかりやすい形ではないかもしれませんが、私なりの答えをフィルムに焼き付けました。
最後に、この作品は介護士や障害を抱える人への映画だけでは無く、頑張ってもうまく行かない、何かに失敗し、塞ぎ込んでしまった人に観てほしい映画です。