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  • 動画配信ワークショップの紹介

インターネット時代以降の映像を創造するために

2021年度の日本映画大学では、インターネットで配信される動画を作りたい! という声に応えるために、「動画配信ワークショップ」を新設し、第一線で活躍されている多様なゲストの方々に来ていただき講義をしていただいたのちに、実際に作品を制作しYouTubeで公開する授業を行いました。

ここでは、その講義と実習の内容をご紹介いたします。

講義パート

第1回:相庭峰志氏(㈱IMAGICAエンタテインメントメディアサービス)

初回は、YouTubeなどの動画配信メディアのお仕事をなさっている、 ㈱IMAGICAエンタテインメントメディアサービスの相庭峰志さんにお越しいただきました。

普段なにげなく見ている配信動画がどのようなビジネスになっているのかや、好まれる映像の傾向、注目されるべきYouTuberや、新しい可能性について講義をしていただきました。

特に、今までだと採算が取れなかったようなマニアックな映像作品でも、全世界の人々が集まって見てくれることによって作り続けられるし、広がるという点に、新しいメディアの意義を感じさせられました。

第2回:伊奈正晴氏(一般社団法人コンテンツ海外流通促進機構(CODA))

2回目は、一般社団法人コンテンツ海外流通促進機構(CODA) の伊奈正晴さんにお越しいただき、著作権についてのレクチャーをしていただきました。

かつて東宝で海外との交渉や知的財産を巡る戦略を長い間なさっていた「タフ・ネゴシエーター」でいらっしゃり、ハリウッド版『ゴジラ』などのお仕事に関わってこられた伊奈さんのお話からは、世界を相手に戦うコンテンツビジネスの厳しさと楽しさが非常に伝わってきました。

教員として同席していた私(藤田直哉)ですら、身が引き締まる思いでした。

第3回:津田大介氏(有限会社ネオローグ)

ネットを舞台・題材に活躍されているジャーナリストであり、あいちトリエンナーレ2019のディレクターをなさっていた津田大介さんにお越しいただき、ネット上のコンプライアンスについてお話しいただきました。

炎上や、差別、ヘイトスピーチ、フェイクニュース、ポストトゥルースなどの問題を分かりやすく、そして学生たちに親身な姿勢でお教えくださり、ネットにどう向き合い表現するべきなのかの理解を学生たちは深めていました。

ネットという新しいメディアが誕生したときに、その可能性を信じて飛び込み、ポリタスTVなどのメディアを作り出した津田さんの覚悟や経験のお話は、学生たちを大きく感化したと思います。

第4回:澤木悠紀奈氏(株式会社Brave group)

最後の講義では、卒業生にして、20代でバーチャルユーチューバーのプロデューサーとして大成功を収めている澤木悠紀奈さんに起こしいただき、バーチャルユーチューバーという「新しい芸能」「新しい映像」の世界のビジネス構造や、そこで求められているものは何なのか、ということをお話いただきました。

具体的には、観客の興味の関心が「親密さ」を求めるように変わっていることであったり、観客のニーズを分析し把握した上で計算し、キャラクターの性格や設定を作り上げているということなどを学びました。

企画立ち上げからキャラクター作り、マネージメントなどなど澤木さんが具体的になさってこられた仕事を知り、新しく発展している業界と表現の勢いを感じることの出来た貴重な回でした。

実習パート

実習パートでは、講義パートで学んだことを活かし、学生たちがそれぞれに作品作りを行いました。指導は、島田隆一先生が中心になり、私(藤田)と2人で行っていきました。

新しいジャンルの表現では、実際にそれに触れてきた世代の感性や感覚が重要になると、教員としては考えておりました。なので、何が良い、何が悪いかを事前に教員が押し付けることはせず、学生たちの感覚やアイデアを最大限に尊重するやり方を工夫しました。

何を作るのかは学生たちが自由に決めて良い。班を作るのか一人でやるのかも自由。一定の金額の予算は用意するが、撮影・出演・編集などは自前で行うこと。という条件で企画書を提示してもらい、「何が面白いのか」を学生自身が言語化したプレゼンをした後に、それを「より良い」ものにするために教員や学生たちから意見を出し合い、それを元に実作・ブラッシュアップをしていくという授業の進め方をしました。

なので、非常に多様なアイデアの作品が出来上がり、それぞれの学生たちの才能や感性が非常に生きた結果になったと思います。学生たち自身の創造性・能動性・自主性も非常に上がり、様々な工夫が随所に見られる良い内容になりました。このことは学生たちのモチベーションにも良い影響を与えているようで、出席率がなんと全体で90%を超えるという結果になりました。

もちろん、出来不出来はあります。しかしながら、創造の喜びと情熱のスイッチが入った姿を見ることは、私たち教員によって、未来の希望を感じさせるものでした。

これから、「映画」そのものの内容も大きく変わっていくことが予測されます。配信動画の方に可能性を見出す学生も多いと思います。そのような未来の新しい映像の世界を、積極的に創造していくような果敢な学生たちのこの先に期待していいのではないかと感じさせられる授業でした。(文:藤田直哉

動画配信WS作品

以下に、学生たちが実習で実際に制作した作品をご紹介いたします。ご鑑賞いただければ幸いです。