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テレビ東京プロデューサー・替山茂樹さんによる特別講義を実施

キャリアサポートの授業の一環として1月10日、テレビ東京プロデューサーの替山茂樹さんに特別講義を行っていただきました。

この授業は専門コースに進んだ学生のキャリアを具体的に支援することを目的に行われ、毎回、映画・映像業界で働く方々をお招きした講義を実施しています。

この日は「テレビ局プロデューサー」をテーマに、テレビ局の仕事の全体像と、企業のなかでサラリーマンとしてものを作ることの実際をお話いただきました。

プロフィール紹介

■ 替山 茂樹(かえやま しげき)
1958年生まれ。1982年株式会社テレビ東京入社。初プロデュース作品『ヒマラヤが燃えた夏』(テレビせとうち、1995年)でギャラクシー賞選奨受賞。また『森達也の「ドキュメンタリーは嘘をつく」』(テレビ東京、2006年)は日本民間放送連盟賞「放送と公共性」部門優秀賞を、『TV強制合宿~タブーな番組企画会議』(同前、2009)はATP賞ドキュメンタリー部門優秀賞を受賞している。2010年より報道局プロデューサー。『教えて!ドクター 家族の健康』(BSテレ東、2013年-)や各種特番などを担当。

【テレビ東京・BSテレ東公式サイト】
 https://www.tv-tokyo.co.jp/

講義「テレビ局プロデューサー」

緒方明教授 キャリアサポートセンター長

最初に、緒方教授がテレビ業界の概説をし、映画とは異なりテレビ局は番組の「枠」をまず埋めなくてはならないこと、また日本は世界的にみて民放が多いといった特徴が挙げられます。

そして、お金を出すのはスポンサーと代理店、番組は制作会社が現場を担うことが多いという図式を受け、替山さんにはまず、テレビ局の仕組みとあわせてプロデューサーのお仕事をご説明いただきました。

テレビ局プロデューサーの仕事

テレビ局プロデューサー(以下、P)は主に「制作局」、「スポーツ局」、「報道局」に所属し、担当する番組の総責任者という立場になります。

Pの仕事は(番組によって範囲は異なりますが)、企画・番組の方向性・出演者・スタッフの決定に始まり構成会議・収録・試写・MA立ち合い、EPGやラテ欄書き等々多岐にわたりますが、必ずやらなければならないのは制作にかかわるお金の管理です。

まず制作費をどこに、どれだけ配分するかを考えます。Pは「編成局」が決めた番組の制作費に沿って予算書をまとめ、編成部・編成管理部・契約部といった関係部署との予算会議を経て制作に入ります。番組制作後、精算するまでがPのお金に関する仕事ということになります。

制作費は「営業局」がスポンサーや広告代理店との折衝を通して集めた売り上げから割り振られます。ディレクターは現場演出の責任者(映画では監督にあたる)です。

最近は各社、配信事業にも注力しているため、担当部署を拡充しているとのこと。またコンテンツ事業部が手がける深夜ドラマはある程度自由に制作できるなど、部署によって制作環境の違いもあるようです。

テレビ局のこのような仕組みのなかで、緒方教授からは「希望の部署に行くことはできるのか」という、学生がもっとも気になる質問がなされました。

配属について

替山さんの答えは、「(テレビ東京の場合)何年か働いていると、希望の職場に行けることもある」というものです。会社によってはさまざまな仕事を経験させる方針をとるところがあり、緒方教授も「サラリーで仕事をするとは、自分の好きなところで働けるわけではない」ことを強調します。

また、かつて新入社員は制作・報道・スポーツなど番組制作現場への配属希望が多かったものの、近年は広報や事業(イベント)の志望者が増えてきたといいます。たとえ最初に希望が叶わなくても、勤続し希望を出し続けることで別の部署に行ける可能性があります。

一方で、会社で色んな仕事をすることは、キャリアにとって悪いことではなく、むしろ後で役に立つということを、替山さんの実体験を通してご紹介いただきました。

ADからプロデューサーになるまで

当初、演出局(現在の制作局)に配属された替山さんは、ADとして寝る間を惜しんで働きディレクターになった直後、営業局に異動となります。これは「組織に就職するとは、基本的に不条理」という緒方教授の言葉とも符合します。

そして8年後、今度は系列局の「テレビせとうち」に出向。地方局ではなんでもやらなくてはなりませんでしたが、そこで開局10周年の特番を任され、プロデューサーデビューを果たしました。「なんでもやる」という経験が、このように活かされることもあるのです。

テレビ東京に復帰してからは、考査部(現在の番組審査部)に配属され、またもや制作とは離れてしまいますが、結果的に放送法への理解を深められ、その後の番組制作に大きな影響を与えられたといいます。

「国の圧力から表現の自由を保障している」という理解のもと、「テレビはもっと自由でいいんだ」という姿勢に行き着きました。

そして、ついに制作局に戻り、メディアリテラシー特番『森達也の「ドキュメンタリーは嘘をつく」』を企画するに至ります。

森達也の「ドキュメンタリーは嘘をつく」の上映
森 達也、替山 茂樹 (著) キネマ旬報社、2009年

19年ぶりに制作局に戻ってくると、以前と比べ、よりプロデューサーが内容に関与する態勢になっていました。

そこで替山さんは、『A』『A2』で知られる森達也監督の協力を得て、フェイクドキュメンタリーのメディアリテラシー特番『森達也の「ドキュメンタリーは嘘をつく」』を企画します。

授業では実際の番組を上映していただき、学生たちは「与えられた情報を鵜呑みにせずに、主体的に考えること」を学びました。

上映後、「変だぞ、と思って考えること自体が、メディアリテラシーにつながる」と替山さんは述べ、番組も違和感を出すように構成したと、演出の意図を明かされました。

この番組は、日本民間放送連盟賞「放送と公共性」部門優秀賞を獲得しました。

学生へのメッセージ

これらの経験を踏まえ、替山さんは「意に沿わない部署にいっても、絶対に役に立つ」というメッセージを、学生たちに伝えました。

緒方教授も、「サラリーマンになった場合、嫌なことが後で役立つ」と重ねて語り、「さまざまな経験を積んで働くことで、“自分が何者なのか”わかる瞬間が訪れる」と説きました。

その場その場で一生懸命仕事に向き合うこと。それがキャリアになる。そのことを、学生たちは今回の授業を通して胸に刻みました。

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