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【レポート】第10回シルクロード国際映画祭(安岡卓治先生)       

報告者 : 安岡 卓治 (教授/映画プロデューサー)

原一男監督『ゆきゆきて、神軍』(1988)の助監督を経て、園子温らのインディーズ映画を数多くプロデュース。森達也監督『A』(1998)、『A2』(2000)で山形国際ドキュメンタリー映画祭特別賞・市民賞を受賞。プロデュース作品『LittleBird イラク戦火の家族たち』(2005)がロカルノ国際映画祭人権部門最優秀賞受賞。共同監督作品『311』(2011)、編集作品『遺言 原発さえなければ』(2013)が山形国際ドキュメンタリー映画祭で公式上映。近年のプロデュース作品に『イラク チグリスに浮かぶ平和』(2014)、『赤浜ロックンロール』(2015)、『A2 完全版』(2016)、『サマショール 遺言 第6章』(編集プロデューサー:2020)など。単著に「日本映画大学で実践しているドキュメンタリー映像制作の作法」(玄光社、2019)。

第10回シルクロード国際映画祭

開催日程 2023924日~28
開催場所 中華人民共和国・福建省福州市
シルクロード国際映画祭は中国国内の作品を中核としながら、シルクロードが繋ぐ東アジアから中央アジア、ヨーロッパまでの主要な劇映画作品を集約する大規模映画祭で、主演男優・女優、脚本、監督等多様な賞が用意され、新人若手による短編作品コンペを有する。
安岡卓治教授は同映画祭の学生・若手新人に向けたセクション『青年電影盛典』において、各国の映画教育機関が集い、それぞれの特徴や直面する課題等にかんするシンポジウム『影視教育国際検討会』のパネラー、また、この映画祭の一環として『福州船政学院』で開かれた講義「日本のドキュメンタリー創作」の講師、『青年電影盛典』のコンペでのプレゼンターとして、運営主体のひとつである北京電影学院・孟中先生の要請に基づいて参加。




参加者集合写真(中央右手に安岡教授)

9月25日

Tne Hotel Coli(以下ホテル)中会議場にて、シンポジウム『影視教育国際検討会』開催。
北京電影学院からは、主催の孟中氏、張獻民氏を含め10名ほど、雲南藝術大学から学長の宋杰氏、南京芸術大学等中国各地で映像教育に携わる教員各氏をはじめ、韓国・延世大学のユ・ヤンシク氏など、私を含めた東アジアの教員が参加。
各教育機関の特徴や課題などを解説。延世大は、壮麗なグラフィックを多用したPPTでプレゼン。
いずれの機関でも教員難が判明。
本学の特徴としては、1年次の『人間総合研究』を全学生が受講し、2年次にドラマとドキュメンタリーが演出演習として並立されていること。その源泉は、本学創設者・今村昌平の『人間観察のために本学はある』というポリシーが中核にあり、カリキュラムに反映されていることを強調。参加者一同から驚嘆の声が上がる。
その後ホテルレストランにて昼食。南京芸術大学教員、海南省三亜市の宣伝部出版電影科員らと歓談。来訪希望とのこと。  

9月26日

ホテルロビーティールームにて、北京電影学院・孟中氏、雲南藝術大学・宋杰氏と会合。
その後、14時半から福州船政学院の301教室にて講義『日本のドキュメンタリー創作について』
今回、この映画祭に参加している北京電影学院シナリオキャンプの参加者の他、ボランティアや船政学院の学生など総勢100名余りが受講。
戦前のプロキノから始まり、戦時中の日本のプロパガンダアニメ『桃太郎・海の神兵』の一部、そして亀井文夫の経歴、『戦ふ兵隊』をはじめとした戦中の作品、さらに戦後の作品が日本のドキュメンタリーに深い影響をもたらしたこと。土本典昭をはじめ、インディペンデントで当時の日本を批判する連作があったこと。政治の激しい情勢の中、個人に内在する問題を描いた原一男、そして、原に大きな影響を与えた今村昌平、さらに今村が創設した本学のカリキュラム等について映像を交えながら講義。その後は質疑が止まず、17時の時間切れまで続いた。

福州船政学院で講義する安岡教授

受講生たちと安岡教授(前列中央)

19時ホテル大会議室にて、『青年電影盛典』授賞式開催。
(プレゼンターとして参加)

『青年電影盛典』授賞式

プレゼンターとして延世大学ユ先生と授賞式にスタンバイする安岡教授

9月27日

10時半から16時すぎまで、ホテル会議室前にて日本映画大学での授業を日中を結ぶオンラインで実施。
18時にホテルから満員のバスにてシルクロード国際映画祭授賞式会場へ出発。
同乗の北京電影学院のボランティア学生を含む乗客はいづれも高揚。
会場となる閩越水鎮3000エーカー。広大な敷地を持つ複合娯楽公園。
敷地内には古来の中国建築を模した宮廷風建造物の他、広大な庭園、宿泊施設や各種飲食店もある。
伝統建造物をステージにし、その前の広大な広場に樹脂椅子が並べられ、数千の客席が設けられる。
ゲートのガードには警察官が配置され、入場券が2度に渡って厳格にチェックされていた。
濃いメイクで派手な衣装を身にまとった、露出が目立つ女性が数名入ろうとしたが、警察官に排除されていた。
映画関係者の目に留まろうとしたのだろうか。2000年のカンヌ映画祭と同じような光景に唖然とする。
国際コンペの審査委員長・ドニ―・イエン(『ローグワン/スターウォーズ』や『ジョン・ウィック:コンセクエンス』等にも出演したカンフースター)が一目見たいと思った私だったが、ステージは遠く、映像による作品紹介もなく、全編中国語。
巨大なディスプレイを通してみる姿に落胆し、会場を後にした。

巨大な会場上空には無数の撮影用ドローン。クレーン等の特機も多数配備されていた

無数の花火とステージ一面の電飾パネル

スクリーン越しのドニー・イェン

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